語学も資格もムダになる「長寿化+AI」時代 「いま役に立たないこと」が価値を生む

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日本では新卒時の就職活動で失敗したらやり直しがきかないという考え方がまだまだ主流ですし、デフレマインドも手伝って、ちょっと道から外れると生きていけないのではないかという不安感も強い。私自身も教え子に対して、よほど優秀な学生ならともかく、そうでない学生に対して無責任に「好きなことして生きろ」とはなかなか言えません。だから難しい。

学生もそれがわかっているから、まじめに資格取得のための勉強をするわけです。残念ながら、これからやってくるAI時代の対処法とは真逆の流れになっているのが日本の現状です。

ちなみに東大総長だった蓮實重彦先生は、「知」における放蕩(ほうとう)が大事だと言っていて、私はまったくそのとおりだと思っています。それは、役に立ちそうにもない本を好奇心のおもむくままに読み漁る、というようなことです。

それから、美術館巡りだとか、映画観賞だとか、旅に出るとか、要するに自分の感性を育むこと。そうした役に立たないことが、むしろクリエーティビティにつながっていくのです。

今すぐ役に立つ本を1冊読んで何か知識を身に付けたとしても、それは近い将来、AIに取って代わられるでしょう。短期的に見たら、それは明日の会議には役立つかもしれない。しかし長期的に見たら、今役に立つものほど、役に立たなくなっていく可能性があるのです。人間はむしろ、無駄なことや遠回りをたくさんして、AIにとって難しい感性や能力を磨くしかないというわけです。

頭脳(知性)で勝負する時代がやってくる

かつての日本は、学生時代に何も学ばなくてもそれなりに生きていくことができました。真っ白な状態で会社に入り、研修をみっちり受けて会社の色に染まり、あとは定年まで馬車馬のように働く。それで人生が終わっていたのです。

しかし、そういう時代はもう完全に終わりました。これからは頭脳で勝負する時代。それなりに高所得を維持したいと思ったら、たとえば大学院などに入り直して、高度な技能や知性を身に付けて、高いレベルの頭脳労働をやっていくしかありません。

事務系の労働はAIに取って代わられますし、他の職を探すといっても給料はどんどん下がっていきます。要するに知性を持たない人が普通に稼ぐのが難しくなっているのです。したがって、資格のための勉強ではなく、教養を高めていくための勉強をするしかない。

今後、AIの技術が進歩していくのは間違いないでしょう。多くの人が職を失ったり稼げなくなったりする社会では、ベーシックインカム(BI)を導入することも考えられます。

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