カルビー松本会長「労働時間の減少は必然だ」 働き方改革の旗手が考える日本の課題

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週5日働くとすると、1日3時間。そんな働き方は本当に可能なのか?(撮影:今井康一)
人間がAIやロボットとの競争に負けつつある時代の処方箋として「週15時間労働」を掲げた刺激的な書籍『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』が日本を含め20カ国での出版が決定し、世界的な話題になっている。
著者は29歳のオランダ人、ルトガー・ブレグマン。オランダは、ワークシェアリングを世界で初めて制度化するなど(ワッセナー合意)、働き方改革の先進国だ。しかし「週15時間労働」すなわち週5日働くとすると1日3時間。そんなことは本当に可能なのだろうか。
カルビー会長兼CEOに就任して以来、「ノーミーティング、ノーメモ」(会議なし、資料なし)など抜本的な働き方改革を通じて労働時間短縮に取り組んできた松本晃氏。『隷属なき道』の描く週15時間労働の世界について松本氏はどう感じるのだろうか。

労働時間が減っていくのは必然

今後1人当たりの平均労働時間は確実に減っていきます。その過程で週15時間労働に近づいていくのは間違いありません。経済学者ケインズが1930年にすでに「2030年に人々の労働時間は週15時間になる」と予言していたと『隷属なき道』にはあります。そして、そうなっていくのは、必然だと言うのです。

松本晃(まつもと あきら)/1947年、京都府生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。1972年伊藤忠商事入社。1986年に子会社センチュリーメディカルに取締役として出向し、倒産寸前の会社の売上高を6年で約20倍にする。1993年ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカルに入社。1999年ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長。9年間で売上高を大きく伸ばし、女性登用も進める。2009年にカルビー会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。以降カルビーは働き方改革を進める一方で7期連続での増収増益を続けている〔写真:Takuya Sugiyama(Bungeishunju)〕

大きな要因は「機械」です。AIやIoTの技術を駆使すれば、多くの産業で働き手としての人が必要なくなる、そんな時代に差し掛かっています。まず産業革命で、第1次機械との競争がありました。その中で、織物工場が蒸気機関によって誕生し、これまでの手作業による織物工がいらなくなるというように、人間の労働は機械によって置き換えられていきました。それで、労働時間は産業革命以来、順調に下がっていったのです。

そして、現在は、AIやIoTを駆使したロボットによって第2次機械との競争が始まっており、ここでも労働時間が減る。

農業ではトラクターや刈り取り機もすでに無人で走っています。製造業もどんどん自動化している。そして人海戦術だと考えられてきた第3次産業でも変化は起こっています。私はジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長を務めた経験から、若手医師の外科離れを防ぐNPO法人の代表をしていますが、外科医の労働時間も新しいテクノロジーが進んでいる分野では短縮しています。

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