アジア諸国は急速に中国になびき始めている トランプ氏が招く米国離れ
[マニラ 2日 ロイター] - 中国政府の勢力圏に引き寄せられる国々がアジア全域で増えつつある。先月末のASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が示した南シナ海の領有権問題に対する弱腰姿勢は、こうした根本的な地政学的シフトが勢いを増していることを明確に物語っている。
アジア「基軸」戦略が放棄された?
トランプ米大統領が先週末にフィリピン、タイ、シンガポールの首脳と相次いで電話会談を行ったことは、トランプ氏の「米国第一」主義によってオバマ前政権の掲げたアジア「基軸」戦略が放棄されたのではないかと懸念していた人々を勇気づけたかもしれない。
だが、プリーバス大統領首席補佐官によれば、各国首脳との会談は、北朝鮮との対立が「アジアでの核や大量破壊」につながった場合に、アジア同盟国との連携を保つことを意図したもので、広範囲な戦略的目標には触れなかったという。
米国が自分たちの後ろ盾になっていると、東南アジア諸国が安心するためには、もっと別の何かが必要だろう。
それと同時に、いくつかの東南アジア諸国は中国に接近しつつある。南シナ海の領有権紛争に対する態度を和らげ、中国政府が進めるインフラ整備計画「一帯一路」の分け前にあずかることで、米国による環太平洋経済連携協定(TPP)離脱のダメージを補おうとしている。
トランプ大統領と中国の習近平国家主席のあいだで予想外の友好関係が生まれていることも、中国寄りにシフトしているアジア諸国にさらなる自信を与えている可能性がある。
「以前であれば、東南アジア諸国の大半は、中国の地域的な経済イニシアチブと、米国による中国への対抗策の双方から利益を得たいと考えていた」と東南アジア研究所(シンガポール)のマルコム・クック上席研究員は語る。「現在、このバランスのうち、後者についての疑問が生じている。そこで、外交面、安全保障問題において中国に従う圧力が高まっている」