「通勤60分以内」が子育て夫婦の人生を変える 過酷な保活は、賃貸暮らしで乗り越えるべし

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筆者が保育園に子どもを連れていくときに気づくのは、男性の参加率の高さです。正確にカウントしたわけではありませんが、見たところ3割以上が出勤前の男性です。彼らの職場が23区内だと仮定すれば、8時半に登園させて9時出社も不可能ではありません。フレックスタイムがあって9時半出社が可能なら、もっと余裕をもって送ることも可能でしょう。

夕方も同様です。子どもと一緒に食卓を囲み、風呂に入ることは、小さな子を持つ親の楽しみのひとつですが、これも早く家に帰れてこそできることです。残業を少ししたとしても、通勤時間そのものが短ければ、食事の時間に間に合う可能性が高まるわけです。

働く女性にとっても、大きなメリットがあります。子育て中の夫婦が共に働き続ける、特に共に正社員として働き続けようとすると、多くの場合、女性に負担がかかるものですが、それを軽減できるからです。

日々のお迎えで、定時退社して6時過ぎに園に到着しようとすれば、職場との距離を1時間以内にする必要があります。また、急な発熱や病気の対応で、会社から駆け付ける時間を短縮するのも、職住近接しかありません。さらには、食事作りから、食べさせて風呂に入れ寝かしつけまでの怒濤の数時間を母親がひとりでやり繰りするのはかなり大変。父親もそれまでに帰宅することができれば、負担はぐっと減ります。

また、災害時のリスクヘッジとしても職住近接は機能します。筆者の友人夫婦では母親側の転職活動時のキーワードに「震災時に歩いて子どもをお迎えに行けるか」を挙げていました。家に帰るまで電車で90分かかるとすれば、徒歩帰宅で少なくとも6時間ほどかかるでしょう。もしものとき、当日中にお迎えが可能になる点もまた、職住近接のメリットだと思います。

教育資金・老後の蓄えの捻出には、共働きが必須

もっとも、「そこまでして共働きをする必要があるのか」というご意見もあるでしょう。ただ、共働き夫婦が、子どもが誕生したのちも共働きを続けることはマネープラン上とても重要です。むしろ、マネープラン上の課題を解決するためには共働きが必須であり、その実現のために職住近接を選択するのだと考えてみると、違和感も減るかもしれません。

育児・教育費を含めた生活コストをどちらかだけが単身で稼ぐことは難しくなっています。共働きを前提にし、夫婦の合計所得で家計をやり繰りする発想を持たなければ、日々のやり繰りにも苦労することになります。

日々の家計が赤字ということは、将来に向けた備えも困難ということです。子どもの人数に比例してのしかかる課題のひとつが高校と大学の進学費用です。日本政策金融公庫の調査によれば、高校と大学に通う計7年間でかかる費用は平均975万円となっています。子どもが2人いるならば、2000万円近くかかるということで、年収600万円くらいの男性が独り相撲しても、確保することは困難です。

また、見過ごされがちなのは老後への備えです。老後資金作りはもはや必須の時代ですが、子育て終了後に初めて備えるようなやり方はいまや通用しません。夫婦が30代から40代で生まれた子どもが卒業するのは、50代の後半から60代であり、卒業後にようやく貯蓄を始めたところで定年までに残された時間が短すぎるからです。

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