史上最悪の米ロ関係が世界にもたらす悪影響 北朝鮮問題からテロとの闘いまで

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米政府とロシア政府はまた、欧州における北大西洋条約機構(NATO)とロシアの軍事衝突のリスクを低減する点でも利害が一致している。が、残念なことに、米ロ間の連絡チャンネルのほとんどは、ロシアによるクリミア併合以降保留となっており、両国間のほんの小さな事件がコントロールの効かなくなる状態へ発展する危険性が高まっている。敵を引き下がらせる手段として核兵器を使うと脅すロシアの戦略は、最悪の事態が発生する可能性を高めているのである。

もし、ロシアと中国が一緒になって米国に対抗することになれば、米国は苦しい立場に追い込まれるだろう。冷戦期、当時のヘンリー・キッシンジャー国務長官は、いわゆる「トライアングル外交」を進め、米政府は中国およびロシアの両政府という2大共産主義大国と、それまでに築いてきた関係よりも良い関係を発展させようと模索した。

このままではトライアングル外交で孤立する

現在の米ロ関係の低迷によって、ロシアが中国の懐の中に収まることになる可能性が高まっており、これは米国が新しいトライアングルの中で孤立することにつながる。中国が米国の最も大きな地政学的ライバルに今後数年でなっていくなかで、米政府はこのシナリオを避ける努力をするべきだ。米ロ関係の改善は、これにつながるものだ。

大きなハードルはある。トランプ大統領が指名したリチャード・グレネルNATO大使や、新しい国家安全保障会議のロシアの専門家、フィオナ・ヒル氏、国家安全保障担当大統領補佐官のヒューバート・レイモンド・マクマスター中将など、トランプ政権の上級職の多くは、選挙期間中のトランプ大統領よりもタカ派だ。

ロシア政府の大統領選挙への関与に関して現在行われている調査は、たとえトランプ大統領が望んだとしても、ロシア政府とのより良好な関係を追求することを政治的に難しくする。なかには、トランプ大統領のアサド政権に対する強硬な姿勢は、トランプ大統領がロシアと過剰に親密な関係を続けているとする認識に反論したいという政権の希望が働いたのではないか、と見ている人もいる。

たとえトランプ大統領が、こうした障害を乗り越えられるとしても、カギを握る多くの問題に関して、プーチン大統領と合意できるという保証はない。シリアに対するミサイル防衛問題からウクライナ問題に至るまで、両者の考えはあまりにもかけ離れすぎているのかもしれない。

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