シリア攻撃はトランプ「迷走」の始まりか 安保理は未承認、ロシアとは対立、ISも野放し

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米軍艦からシリアに向けて、59発の巡航ミサイル「トマホーク」が発射された。再び憎悪の連鎖が始まるのか(写真:米海軍提供・ロイター=共同)

米国は4月6日夜(日本時間7日午前)、シリアのシュアイラート空軍基地に対して、59発の巡航ミサイル「トマホーク」による攻撃を行った。戦闘機や格納庫、レーダー、弾薬庫、給油所、対空防衛システムなどの破壊が狙いであったと言われている。

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おりしも、米国のトランプ大統領と中国の習近平・国家主席の初の会談で、挑発的な行動を繰り返す北朝鮮の問題が話し合われていた最中である。またシリアは北朝鮮と関係が深い。そんなことから、「今回の攻撃は北朝鮮も念頭に置いたものだった」という見方がある。だが、米国がシリアを攻撃したのは、シリアの政府軍が化学兵器を使用したことが理由だ。トランプ氏はシリア攻撃の理由を明確に説明している。

シリア政府軍による化学兵器が使用されたのは、4月4日、シリア北西部のイドリブ県における空爆中のことであり、民間人多数を含む100人以上が死亡した。現地で医療活動に従事している、国際医療団体「シリア医療救援組織連合(UOSSM)」によると、サリンなど、化学兵器が使用された症状が多数見られるという。

化学兵器使用はあったか、なかったのか

この事件に国際社会は激しく反発した。トランプ氏は同日中に声明を出し、「アサド政権による憎むべき行為だ。女性や子どもを含む、無実の人々を狙った化学兵器による攻撃を、文明世界は無視できない。私にとっての多くの一線を越えた。昨日起きたことを私は受け入れられない。大きな衝撃だった」などとシリアを批判した。

一方、シリア政府軍は国営メディアを通じて、関与を否定した。また、シリア政府の側に立つロシアは、「反体制派の倉庫をシリア軍が爆撃し、毒ガスが流出した」とする見解を示したとも言われている。

どちらを信じてよいのか。公表されていることだけでは断定困難だが、米国は国際医療団体による発表以外にも独自の情報網を持っており、それらを併せて下した判断だったと思われる。

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