米国でトランプ新政権が成立したとき、米中関係は最悪の状態にあったが、最近は落ち着いてきた。中国の習近平国家主席は4月中にも訪米するといわれている。香港の中国系新聞・大公報紙(3月2日付)は、「トランプが登場して以来、中米関係は表面的には平静だが、水面下では沸き返っていた。しかし、平穏な軌道に戻る兆しが出てきた」と記している。
きっかけとなったのは、トランプ大統領が中国の主張である「一つの中国」を尊重する姿勢を示したことだ。さらにその後、楊潔篪外交担当国務委員が訪米、2月28日にレックス・ティラーソン国務長官と会談したのに加え、トランプ氏とも短時間であったが面会できたので、中国側は自信をつけたものと思われる。
電話会談すらしなかった両首脳
中国はかねてより戦略的行動を得意としている。戦略的行動とは、明確な目標を立て、実行することである。そんなことはどこの国、どこの学校でも教えられている、当たり前のことだと思われるかもしれない。が、中国の戦略的行動は徹底しており、一度決めた目標については何人も異議を唱えられず、また、目標達成のために、あらゆる資源(利用可能な手段)が投入される。
このたび、一つの中国問題について、中国は戦略的に行動し首尾よく目標を達成した。これはどういうことか、以下に説明しよう。
1月20日、トランプ氏が米国の新大統領に就任したのに対して、習氏は祝電を送った。米中両国の関係はよくなかったが、それでも外交儀礼として中国は各国と同様にふるまったのである。
トランプ氏は、祝電をもらった各国首脳に電話で謝辞を述べたが、習氏との電話会談は2月になっても行われなかった。その原因は一つの中国問題であった。一方、習氏はトランプ氏が一つの中国を認めないかぎり、電話会談に応じないことに決定し、中国側にそのことを伝えていたのだ。具体的に、いつ、どのように伝えたかは、明らかでない。トランプ氏への祝電の内容が公表されなかったことからすると、そこである程度言及した可能性もある。
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