結局、オバマ氏は議会の承認を求めたが、それが得られないうちに、ロシアの仲介によってシリアが化学兵器禁止条約に加入し、化学兵器使用問題はひとまず収束。議会はオバマ氏に承認を与える必要がなくなったという経緯がある。
当然ながら米国では、このいきさつは忘れられていない。トランプ氏が今回のミサイル攻撃について、習氏が同席している米中首脳会談の場で発表したとき、ある記者は「議会の承認を求めるか」とトランプ氏の一貫性に疑問を呈する質問を行った。が、トランプ氏は、何も答えなかった。現在、米国内では、今回のミサイル攻撃に対して、議会の承認問題も含め、合法性を問題視する言論が噴出している。
実は”オバマ化”しているトランプ政権?
化学兵器を使用したことについて、改めてトランプ氏とオバマ氏を比較してみる。オバマ氏はミサイル攻撃をしなかったが、アサド大統領の退陣を求めた。トランプ氏はミサイル攻撃をしたが、アサド大統領の退陣を少なくとも今のところ求めていない。どちらが厳しい姿勢なのか、わからなくなっている。
かくして、化学兵器使用問題と対ロ政策で、トランプ政権はオバマ前政権に似てきた。皮肉にもトランプ氏の”オバマ化”が始まっているのかもしれない。
米国は、複雑な国際情勢の中、できるだけ一貫した姿勢で、公平な解決を求めなければ、各国からそっぽを向かれる。強烈な言動で世界の耳目を集めたトランプ氏だが、オバマ時代に戻るのは、ある意味で必然的と思われる。シリア攻撃に踏み切ることについては、国連安全保障理事会の承認のない行動は問題になりうること、ロシアとの関係が悪化すること、IS攻撃の力が弱まること、米議会との関係が微妙になることなど、もろもろのリスクを検討したはずだ。何よりも今後、トランプ政権の一貫性が問われ、信頼性に影響が出てくるだろう。
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