ドナルド・トランプ大統領を陰で操っている「黒幕」と米メディアで大々的に評されているスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問。彼は中東・アフリカ7カ国からの移民を規制する大統領令の骨格を起草した人物として一躍有名になった。マイケル・フリン国家安全保障担当大統領補佐官が突然辞任に追い込まれたあと、ホワイトハウス内でバノン氏の存在はますます大きくなっている。
ところが、これまであまり表に顔を出さなかったこともあり、米メディアはバノン氏の正体を理解しているとは言いがたい。
2月23日、初めて公の場に登場
そのバノン氏は2月23日にワシントン近郊で行われた「保守政治行動会議」(CPAC)年次総会に招かれ、初めて公の場に登場した。その場にはホワイトハウスでともに働くラインス・プリーバス首席補佐官(前共和党全国委員長)も同席した。本来、首席補佐官のほうが格上だが、トランプ大統領はバノン氏を国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーにして重用し、同格扱いにしている。両者を競わせて成果を上げさせようとするトランプ大統領一流の高等戦術だ。
CPACにそろって出席した2人。プリーバス氏がスーツにネクタイ姿だったのに対してバノン氏はチノパンにノーネクタイ姿。バノン氏はかねがね共和党主流派を批判しているのに対して、プリーバス氏は共和党主流派とのパイプ役を担っている。お互いに反りが合わず、不仲ともうわさされているが、CPACでは2人とも冗談を飛ばしながらそれぞれの持ち味を出してアピールした。2人が共鳴し合ったのはメディアに対する批判、攻撃だった。
ホワイトハウス内では、この2人のほかに国家安全保障担当大統領補佐官としてフリン氏の存在が大きかった。だが、フリン氏は駐米ロシア大使との交信記録の存在が明らかにされ、それまで本人が説明していたことに偽りがあることが判明し、結局、辞任に追い込まれた。トランプ大統領としては選挙戦中のフリン氏の働きや今後のイスラム過激派組織ISIS掃討など対テロ戦略での役割を期待していただけに、ギリギリまで擁護する姿勢だった。
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