ウォール街から都落ちしてハリウッドに移り、そこで人種差別的な風土に染まった。若い時ハンサムだったバノン氏はウォール街時代から「女性に失礼なところ」(ウォール街では女性差別主義をしばしばそう表現する)があったが、ハリウッドに移ってからはその度合いは強まった。
そんな差別主義的な考え方を支持する有権者層が意外に多いという現実。それを選挙戦略として使うことの有利性、時代背景を熱心に説いた。政治的野心を実現していくために、トランプ氏はオバマ大統領の1期目の時点で、このバノン氏の才覚に乗ることに決めた。バノン氏にしてみれば、トランプ氏にうまく取り入った。それがトランプ=バノン連携の真相だ。
つまり、バノン氏の本質はウォール街時代にすでに見抜かれていた。ウォール街とメディアは「水と油」の関係だから、ウォール街の情報はメディアには伝わらない。バノン氏には「ひとたらし」という性癖があり、「女性に失礼なところ」がある人物ということを大手メディアは分析できていない。その意味づけに気づかないまま、その人物を「トランプ大統領を陰で操る超大物」として大きく扱い、必要以上に恐れている。
仮にトランプ大統領とバノン氏の意見や考え方が何から何まで一致しているとしたら、いざとなったとき、トランプ大統領の座はもたない。米メディアが幅広く風刺しているように、小物のトランプ大統領が超大物の「黒幕」に操られているとすれば、なおさらだ。だが、現実は違う。トランプ大統領の信じるところはトランプ大統領自身であり、バノン氏とは唯一無二の親友でもなければ、意見や考え方が完全に一致しているわけでもない。むしろ、両者の意見、考え方に違いがあるからこそトランプ政権の牙城は崩れない。
かつてレーガン大統領は「テフロン・レーガン」といわれた。いつ、いかなるときでもへこたれないテフロン加工の強さがあるという意味だ。それはレーガン大統領自身の性格からくる強さだった。トランプ大統領のテフロン性はそれとは違う。多くのアメリカ人が求めている「アメリカファースト」という時代感覚と戦略性のあるバノン思想をトランプ大統領がうまく活用することで仕上がるテフロン性だ。
トランプ陣営のナンバー2はイヴァンカだ
バノン氏も自分の弱点は知っている。「女性に失礼なところ」をイヴァンカの前では絶対に出さない。イヴァンカにバレたりすると、トランプ大統領の逆鱗(げきりん)に触れ、クビが飛ぶことになるからだ。メディアはトランプ陣営のナンバーツーはバノン氏と考えているが、ナンバーツーはまぎれもなくイヴァンカだ。
そのイヴァンカのハートをつかんだのはほかでもない。日本の安倍晋三首相だった。それについてはすでに書いた。バノン氏もそのことは承知している。その証拠に日本に対して何ら嫌味を言っていない。EUやドイツに対して牙をむいているのとは対照的だ。
もう1つエピソードを加えよう。カナダのジャスティン・トルドー首相がトランプ大統領と会談したときのことだ。その会談にはイヴァンカも同席した。トルドー氏がイヴァンカの同席を望んだからだという。トルドー首相が安倍首相の前例にあやかりたいと思ったとしても不思議ではない。
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