トランプ政権「影の大統領」バノンの影響力 ニューヨーク・タイムズ紙の社説より
米大統領の多くは、卓越した政治顧問を抱えていた。そうした顧問の一部は舞台裏で静かに政策を立案していたとされる。ジョージ・W・ブッシュ政権のカール・ローヴやビル・クリントン政権のディック・モリスを思い出していただきたい。
だが、スティーブン・バノンほど、自身の権力基盤を厚かましく強化した側近は、これまでいなかった。そして、ボスの名声や評価をこれほど早く傷つけた人物も、かつて見当たらなかった。
催眠術師ではなく「事実上の大統領」
バノンは右派メディアのブライトバート・ニュースを、「オルタナ右翼」煽動のためにフル活用した。選挙活動中に続き、トランプ政権でも同じ行動を繰り返している。トランプ大統領がメキシコ人やユダヤ人、イスラム教徒に厳しい態度をとっているのは、その表れだ。
トランプは、選挙人団方式による大統領当選をもたらしたマイノリティに対し、垣根を超えて手を差し伸べようとは全くしなかった。そしてバノンも、トランプがそんなことをしないよう取りはからった。
そして、国家安全保障に関連して出された大統領令の内容は、バノンが自らを単なる催眠術師ではなく、事実上の大統領と位置づけていることを示している。
1月28日に署名した大統領令で、トランプはバノンを国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに加える異例の措置をとった。ジョージ・W・ブッシュ大統領の最後の首席補佐官ジョシュア・ボルトンは、政治と国家安全保障は分離されるべきだとして、大統領の政治顧問だったローヴのNSC出席を禁じた。オバマ政権の政治顧問デビッド・アクセルロッドはNSCに出席はしたが、常任メンバーではなかった。