プレゼンの聴衆は、「お母さん」だと思え! 食べやすいサイズで、食べやすい順番が鉄則

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食べやすいサイズで、食べやすい順番に

プレゼンがうまくいかないいちばんの原因は、相手に与える情報量が多すぎることだ。最終的にはいろいろな情報を与えてもいいのだが、一度に多く与えすぎると消化不良を起こしてしまう。

私は、10分で40枚をめどにスライドを用意するが、1枚のスライドあるいは1つのクリックで表示される情報量は削りに削っている。なくても伝わる情報はすべてカットし、1スライド1メッセージに絞る。いうなれば、食べやすいように切り分けた「一口カツ」だ。これを皿(スライド)に一切れずつ出して、口に運んであげる。そして飲み込んだことを確認したら次の一切れを皿に出し、口に運ぶ。決して一度に口に放り込んではいけない。

私は学生に、スライドを作るときはフォントを先に決めてしまうよう指導している。たとえば、あらかじめ32ポイントと決めておくと、スライドに入れられる情報量は物理的に限定される。そこに小さいフォントを使って文字を入れようとしたなら、それは情報量が多すぎるという警告となる。スライドに多くの情報を入れてしまう原因は、それだけで伝わるかどうか自信が持てないからである。しかし、情報は増やすよりも絞り込むほうが伝わるということは覚えておいたほうがいい。

また、口へ運ぶ順番、つまりストーリーの組み立ても重要だ。プレゼンは最終的なメッセージに向けて収束していくようにすると、ストーリーが伝わりやすくなる。そのためにはストーリーの起点には「問題提起」を持ってくるべきだ。われわれの研究でいうと「なぜインフルエンザウイルスは冬に流行するのか」といったものだ。この問題提起がクリアでないと、後続のメッセージも伝わらない。

次に、問題提起を受けて「どう対処した(する)か」「その結果はどうだったか」「そこからいえることは何か」の順で組み立てる。非常にオーソドックスなパターンだが、それだけ万人が受け入れやすいともいえる。人が理解しているパターン、期待しているパターンで伝えることがプレゼンの鉄則であり、奇をてらってサプライズを演出する必要はないのだ。

プレゼン当日の話し方にもコツがある。短く明瞭に話す、聴衆に語りかけるように話すというのは当たり前だが、大事な箇所は「ここ、大事です」とか、3つ要点があるなら「今からお話しする3つが重要です」などとあえて強調する。また、集中して聞いてほしい重要箇所は、話す前に少し沈黙を作り、注目させることも有効だ。「何が重要かは聞いていればおのずとわかる」などと思ってこれをおろそかにしてはいけない。先ほどの一口カツの例でいうと、食べやすいサイズや順番だけに気を配るのではなく、食べるという心の準備もしておいてもらうということだ。

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