インセンティブを見よ!「ミクロ」からわかること
3点シュートの例と減税効果の考察から得られたポイントをまとめると、次のように言えるだろう。
「経済政策をはじめ、ルールの変更がどのような結果をもたらすかを予測するためには、各人のインセンティブとそれに基づく行動の変化をきちんと分析しなければならない」
このように、各人がどのようなインセンティブを持っているかを明示的に考慮することを、経済学の専門用語では「ミクロ的基礎付け」(microfoundation)と呼んでいる。
ルーカスが批判の対象とした、当時の主流派、ケインズ経済学には、このミクロ的な基礎が欠けていたのだ。対して、ルーカスの批判を乗り越えて発展してきた現在の主流派マクロ経済学は、ミクロ的基礎付けを極めて重視するのが特徴的だ。
もちろん、ミクロ的な基礎さえあればその理論が正しい、とは言い切れない。個人のどういったインセンティブに注目するか、どのように経済の仕組みを抽象化するかによって、出てくる結論はいかようにも変わりうる。
リーマンショック以降は、金融危機をうまく予測・説明できなかったこと、危機を克服するための適切な処方箋を提供できなかったことなどから、現代マクロ経済学は学界の内外から厳しく批判されている。これまでのミクロ的基礎付けをより現実に即して発展させていくことが、今まさに必要とされている。
【初出:2013.7.13「週刊東洋経済(セブンの磁力)」】
(担当者通信欄)
自分にとって何が良いかを考えながら行動している人なら、ルールが変わったときには新しいルールの中で新たに考え、やはり自分にとっての良い結果につながる行動をとる。それは当たり前のようでいて、意外に見落としがちなことなのかもしれません。選挙も終わり、いよいよ気になる消費増税問題ですが、これを考えるにあたっても、消費増税によって家計や企業の行動がどのように変わるのか、「ミクロ的基礎付け」は重要です。
さて、安田洋祐先生の「インセンティブの作法」最新記事は2013年8月5日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、マンション大規模修繕完全マニュアル)」に掲載です!
【勝者と敗者の「先送り」、食い違うインセンティブ】
最新記事では、事前と事後のインセンティブの変化について、さらに深掘り。人は好きなことは早めに取り掛かり、いやなことは「先送り」にしてしまいがちですが、それを国家間の問題に拡張して考えてみるとどうでしょうか?「領土問題棚上げ」や「終戦の時期」を例に考えます。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら