「本当に豊かな教育」は民間学童にあり?

佐藤嘉高さんに教育論をぶつけてみよう

本当は小学校を作りたい

――「ファミリーズ」は3階建てなんですね。想像以上に立派で清潔な設備なので驚きました。

本当は小学校を作りたいんですよ。でも、学校法人の設立要件はむちゃくちゃハードルが高い。中学校と高校は小泉内閣の構造改革特区で株式会社立が認められましたが、助成金などが受けられないために、設立は進んでいません。

今、僕個人がやれることは何か、と考えたときに「小学校帰りの子どもたちは何をしているんだろう?」と気づきました。自分自身が親として学童保育を見に行ったことがきっかけです。

――佐藤さん、お子さんがいらっしゃるんですね。

ミュージシャンを目指していた20代は、コミックバンド「ビジーフォー」のローディー(バンドボーイ)をしていた佐藤さん。「本物に触れて、音楽で生きることはあきらめました」

小学3年生と6年生の娘2人と、妻のお腹の中に息子がいます。妻は小学校の教員です。僕は以前、IT関連の会社で働いていたのですが、異空間だった教育が急に身近になり、興味を持っていろいろ調べ始めました。

見学した学童保育は、僕が子どもの頃とまったく変わっていませんでした。小さなプレハブ小屋に何十人もの子どもがいて、勉強をしている子の頭上でボールが飛び交っているような状況。大人はプールの監視員みたいな指導員さんのみ。運営主体は親たちなので、仕事をしているお母さんたちは、夜に会議をしなくちゃいけない。すごい負担ですよ。「これってどうなんだろう?」と疑問を抱きました。

名古屋市には「トワイライトスクール」という組織もあります。放課後の子どもたちを学校内で夕方6時まで預かってくれます。費用は年間数百円。しかし、これは教員の天下り先になっています。教育の第一線から退いて20年みたいなお年寄りが、昔のやり方で子どもを扱っている。

学童もトワイライトも避けたいお母さんはどうするか? 「じゃあ、私が仕事を辞めようかな」という結論になってしまいます。共働きで成り立っていた生活基盤が大きく崩れるし、女性の社会進出も妨げる。そこで、第3の選択肢として民間学童を提案しています。

――民間学童とは聞き慣れない言葉です。

東京にはキッズベースキャンプ(東急グループ)という10年以上続いている大手がありますよ。名古屋では2007年に始めたうちがいちばんの老舗です。最初の2年間は赤字続きで苦労しました。

名古屋は閉鎖的な土地柄なので、民間学童などという新しいものは見学にも来ない。チラシをポスティングしたぐらいでは無反応です。口コミで評判が広がるのを我慢して待ちながら、ホームページを充実させるぐらいしかやりようがありませんでした。初年度に入ってくれた4人の子どもたちはすでに小学校を卒業しましたが、今でもうちにとって特別な存在です。

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