リニア新幹線、成功に向けた課題 JR東海が名古屋で住民向け説明会

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7月16日、名古屋市内でJR東海などが主催する「中央新幹線(リニア中央新幹線)計画」についての説明会が開催された。

この説明会はリニア中央新幹線が走る区間の沿線住民向けに各都県で開催されている。名古屋市内での開催は昨年9月に続き2回目となった。

801名収容の会場は7割程度が埋まった。まずJR東海から愛知県内のルート周辺における動植物の生息状況や大気、水質、振動、騒音、などの環境調査の進捗状況について説明がなされた。ただ、今回は概要説明にとどまり、詳細な結果の公表は秋ごろになるという。

リニア名古屋駅は「可能な限り近く浅く」

続いてリニアの名古屋駅についても説明があった。リニア駅は現在のJR名古屋駅の地下に建設されることが決まっているが、「新幹線の乗り継ぎ時間を考慮し、可能な限り近く浅く建設したい」という。具体的な数字として東京駅の例をあげ、「東京駅は東海道新幹線と横須賀線の乗り継ぎに要する時間は7~12分、東海道新幹線と京葉線の乗り継ぎは10~15分かかるが、名古屋駅のリニアと新幹線の乗り継ぎはこれより短い時間ですむようにしたい」(JR東海の担当者)。

JR東海の説明に引き続き行われた質疑応答の時間では、会場の参加者から活発な質問が出された。前回の名古屋の説明会同様、リニア走行時に発生する磁力による健康被害を心配する声が相次いだ。JR東海側は、「まったく問題ない」という説明を繰り返し行ったが、会場でのやりとりを聞いている限りでは、必ずしも質問者が納得するような回答ではなかったように思われた。

予定の終了時刻を過ぎたあとも質問を求める手はあちこちで上がっていたが、19分オーバーの時点で打ち切りとなった。沿線住民にとって健康に与える影響の問題は最大の関心事だ。全員が納得するまで説明するには多大な労力を伴うに違いないが、沿線住民の協力なくしてリニア中央新幹線の成功はありえない。より丁寧な説明を行うことも必要だろう。

(撮影:尾形 文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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