今回の騒ぎを受け、デルタ航空は上限を9950ドルにまで引き上げたという報道もされているが、日本では、同日便への乗り換えへの補償額が1万円ということなので、それに比べると破格の水準だ。
ユナイテッドは今回、800ドルを申し出たが、69歳の医師であるこの乗客は、翌日診療があることを理由に航空会社側の要請を断ったという。ほとんどの航空会社は乗客が搭乗しないケースを想定し、座席数を超える予約を受け付けており、このオーバーブッキングによる「乗客のはじき出し」は日常的に行われている。アメリカの運輸省のデータによれば、2016年にはオーバーブッキングにより47万5000人が便変更をした。自発的に降りてくれない場合、航空会社が乗客を選んで降ろすことも認められており、4万0629人が便変更を拒否したにもかかわらず、降ろされているという。しかし、こうした力ずくの事態になることはこれまでなかった。
サービスの著しい劣化
今回の騒ぎの背景にあるのが、アメリカの航空会社のサービスに対して、人々の不満が募り続けている現状がある。利益の最大化に血道をあげ、つねに、機内はすし詰めの満席状態。ありとあらゆる経費削減を行っており、サービスの著しい劣化が進んでいる。
手荷物を預けるのに別途25ドル(2つ目は35ドル)程度、取られる。6時間の大陸横断フライトであっても食事はいっさい出されず、機内エンターテインメントもまったくないというケースも多い。乗務員は「笑顔を見せては損」とばかりにおおむね、つっけんどんで、サービス精神のかけらもなく、基本、1度飲み物を配れば、後は姿を見せることもなく、機内後方でおしゃべりをしているだけだ。
以前、筆者がアメリカから日本に戻るときに、ユナイテッドの機内で「ビーフ」を頼んだところ、チッと舌打ちされ、「もうないわ、早く言ってくれないから」と言われ、不愉快な顔をされた。「最後まで注文を取りにこなかったのはそっちなのに」と思いながら、悲しい気分になったのを覚えている。徹頭徹尾「乗せてやっている」感満載なのだ。
先月には、ラスベガスからホノルル行きの飛行機で、毛布を頼んだら、12ドルを要求され、拒んだ客が乗務員と口論になり、飛行機が引き返すという事態もあった。何か文句を言うと、乗務員に盾突き安全を妨害した、と飛行機から追い出されるケースも頻発している。
もちろん、モンスター乗客も少なくないが、乗務員が丁寧に頼めば、こじれることのないケースでも、そもそも接遇するという意識もなく、つっけんどんなので、乗客とのトラブルも絶えない。
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