たとえば次のようなことがあったらどうするでしょうか。
お母さんが、ご主人から「今日の夕食はカレーを作りなさい」「明日の夜は、肉じゃがを作りなさい」と言われて「はい、作ります! 喜んで!」と思うでしょうか。そうはなりませんね。そう命令、強制されるよりも、「今日の夕食はおいしかった!」と言われれば、次はもっとおいしい食事を作ろうと自然に思うのではないでしょうか。
子どもは「また言われた」と思うだけ
これと同様の心理がさまざまなケースで働いているのですが、勉強に限っては、つい「勉強しなさい!」と言ってしまうことが多いようです。もちろん、1回、2回、もしくはたまに言う程度であれば、それほど大きな問題にはなりませんが、言い続けていると、いつしか子どもの心の中に、「勉強しなさい! という言葉を親はいつも自分に言う。今日も言うだろう」と予想します。そしてその予想どおりに、親はいつも言い続けてしまい、子どもは「また言われた」と思うだけになってしまいます。
この状態に対応するには、「子どもの期待を裏切る」ことです。つまり、「また言うだろう」と予想されている言葉は、言わないようにするのです。言わないと、子どもの中にある種の心境の変化が生まれ、自ら考え出します。「なぜ、いつも勉強しろと言ってきたのに、言わないのだろう」と。
このような話をすると、「うちの子は、親が言わないと絶対に勉強しない」という方がいらっしゃいます。しかし「言わない」という状態をたとえば1カ月でも継続的に行ったことがあるのかといいますと、そこまではしていないことが多いのですね。「2、3日言わなかった」とか「1週間は我慢をしました」という状態なのです。つまり、継続的に我慢ができずに言ってしまっているのです。ですから、「言わないとやらない」というのは、「言わない期間」がどの程度かは明確になっておらず、たいがいは、非常に短い期間しか実行していないことが多いのです。
筆者のこれまでの経験からは、子どもの心理に影響を与え始めるのに最低1週間、行動変容までで3週間はかかります。したがって、「最低3週間は勉強しなさいと言わない」状態をつくってみてください。そしてその途中で、子どもが少しでも自主的に何かをやるようになれば、「珍しいわね~」などと嫌味を言うのではなく、「よくやってるね」「頑張ってるね」程度の言葉をかけるとよいでしょう。
これまで3週間継続して「勉強しなさい」と言わなかった方から、「本当に子どもは変わっていきますね」と驚く声をたくさんいただいていますが、一方で、子どもが勉強するようになったことで安心してしまい、しばらくすると、また「勉強しなさい」が始まり、子どもが元の状態に戻ってしまったという方も少なからず見てきました。簡単なことのように見えて、実は難しいことだと思いますが、やはりこの壁はクリアしなければならないでしょう。
なお、これはあくまでも上記のケース1だけに該当する場合です。つまり、ケース1~4の複数に該当している場合は、それぞれに対応しなくてはなりません。しかし、特にケース1の場合だけに心当たりがあるというときは、この方法を試してみてください。これまでのパターンを崩すわけですから、本気で取り組んでいかなければ、また元のもくあみになってしまいます。一度、心を決めて、状況を一気に変えてしまってください。
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