薬局の人手不足が招く恐怖のシナリオとは? 他のどの業界と比べてもその問題は深刻だ
1人の薬剤師が1日に対応する処方箋の標準的な数は、25枚程度とされているが、人手が不足している薬局では、1人で30枚でも40枚でも対応するのが普通になってくるという。
ちなみに、現在の制度では1日あたり40枚までしか処方箋に対処してはいけないと定められているが、「中にはあまりに人手が足りず、40枚を超えて対応している事例も、ごくまれにあるようです」(渡部・業界再編部長)。
そして、過重労働状態が続けば続くほど、ただでさえ少ないスタッフの中から、さらなる離職者が出る可能性が高まる。「少ないスタッフがさらに減ると、残った薬剤師が365日、大量の処方箋に埋もれながら仕事をし続ける状況に陥りかねません。医療過誤を招きかねない危険な状態です」(渡部・業界再編部長)。
ところで冒頭で示したデータでは、人材確保に困っていないと答えた薬局も2割余りあった。ただ、渡部・業界再編部長は、現段階では人員が充足しているだけでは、将来的に薬局として十分な役割を果たせなくなる可能性もあると指摘する。
「健康サポート薬局など、これまでにない新たな取り組みや活動が求められていることを思えば、ほぼすべての薬局が、今のスタッフとは別に1人は新たな人材を確保すべきでしょう。それができなければ、将来的には薬局閉鎖に至る可能性もあります」
閉じたくても閉じられない薬局!?
さらに渡部・業界再編部長は、閉鎖することすらもできない薬局が増えるおそれがあると警鐘を鳴らす。
「たとえば、中山間地など人口が少ない地域では、その薬局が閉じてしまえば、薬を調剤する資源が消滅するような地域だってある。そういう地域では閉じるに閉じられないでしょう」
人材を確保できる見通しも立たないまま、店舗を閉じることもできず、ほんの数人の薬剤師の体力が続くかぎり、なんとか経営を続ける―。CBnewsのアンケート調査では、そうした状況に陥りかねない危険をはらんだ薬局が、かなり存在するというデータも示された。
採用に困っている理由(複数回答)を答えてもらった結果が=グラフ2=だ。