薬局の人手不足が招く恐怖のシナリオとは? 他のどの業界と比べてもその問題は深刻だ

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渡部・業界再編部長は、無理をしてでも薬局を続けようとする経営者が多い点について、「高い志の表れ」と敬意を表しながらも、次のように指摘する。

「すでに述べた理由から、薬局は管理薬剤師に加えてもう2人薬剤師がいなければならない状況にあります。ところが、多くの薬局は管理薬剤師ともう1人、という状態で運営されています。つまり、ほとんどの薬局が人材面で危機に瀕しているのです。この危機を志一つで乗り切るのは、ほとんど不可能です。真に地域医療を想う経営者であれば、M&Aも含めた他社との連携も真剣に模索すべきでしょう」

薬局譲渡で介護事業に専念、売り上げ倍増のケースも

いち早くM&Aに乗り出したことで、別に展開していた事業に専念し、その売り上げを数年で倍増させた経営者もいる。

群馬県安中市で「アンナカ薬局」を運営していた佐鳥俊幸さんが、その譲渡を検討し始めたのは2012年ごろ。その後、薬剤師の確保がさらに厳しさを増すと予測した佐鳥さんは、共同経営者だった父に薬局の譲渡を相談した。しかし、当初は、譲渡に至らなかった。

「当時は十分に人手も確保できていました。正社員で3人、パートで5人の薬剤師がいたのです。年商も2億円はありましたし……」

しかし、この状況はすぐ暗転する。3人いた正社員の薬剤師のうち2人が退職。最後の1人も13年5月には退職することが決まったのだ。この段階で佐鳥さんは残った正社員が退職する前に薬局を譲渡することを決断。近隣の地域で複数の薬局を展開していたメディカルシステムネットワークを念頭に、仲介を依頼した。

「メディカルシステムネットワークさんを考えたのは、地元で薬局を経営する実績があったうえ、研修制度や福利厚生が充実していたこと、そして経営が安定していたことが理由です」(佐鳥さん)

メディカルシステムネットワークへの譲渡は想定していた13年5月に無事、実現した。その後、佐鳥さんは別に手掛けていた介護事業に専念。数年間で売り上げを倍増させることに成功した。

薬局の譲渡について、佐鳥さんは次のように振り返る。

「あと少し決断が早ければ、もう少し高い金額で譲渡できたでしょうが、逆に、もう少し判断が遅れていれば、譲渡先が見つからなかった可能性もあります。ただ、はっきりしているのは、従業員や取引先、顧客にとって最適の譲渡になったということです」

その後、佐鳥さんは介護事業も譲渡。現在は、新たな人材事業の立ち上げに向け、準備を進めている。

「CBnews」編集部

CBnewsは医療・介護ニュースに関する記事を中立・公平な立場から取材・配信するニュースサイト。株式会社 CBnewsが運営

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