財政危機サウジが捨て身で見せた新ビジョン サルマン国王訪日で日本・サウジは近づくか

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訪日したサウジアラビアのサルマン国王(右)。安倍首相(左)とも会談した(写真:ロイター/アフロ)

サウジアラビアと日本の関係は劇的に深化するのか――。

2017年3月12日から15日にわたり、サウジアラビア王国(以下サウジ)のサルマン国王(81)が訪日した。サルマン国王は安倍晋三首相や天皇陛下と会談して、サウジと日本との「包括的で一貫性のある政治、経済、文化、技術での両国関係構築」(国王に随行したサウジ有識者)を前進させた。国王として46年ぶりの訪日は、テレビなどで大きく報道され、日本国民にサウジの存在を印象付けた。

高齢のサルマン国王に代わり、サウジの国家運営を担っているムハンマド副皇太子(31)は、大胆な改革・開放を目指す「ビジョン2030」を打ち出すとともに、2016年9月に訪日して今回のサルマン国王訪日の準備を整えていた。

財政危機と米イラン接近、シーア派台頭

サウジがかつてない困難に直面している。このことが大胆な改革・開放路線を採用させている。1つ目は財政危機だ。一時は1バレル140ドル台という高値を付けた原油価格は、2016年に世界経済の減速やイランの核開発制裁解除により、30ドル台まで下落。その後、原油価格暴落に危機感を募らせた産油国の減産と、ヘッジファンドと連携した相場テコ入れ策が奏功し、50ドル台に戻したが、相場の地合いは悪く、再び40ドル台になっている。「サウジの財政が均衡する原油価格は85ドル以上といわれているだけに大きな影響を受けている」(藤和彦・経済産業研究所上席研究員)という。

2つ目は、サウジが安全保障を依存してきた米国のオバマ前政権がイランと関係改善を果たし、両国関係が極度に冷え切ったことだ。トランプ現政権になり、やや関係改善の兆しがみられるが、トランプ政権は「アメリカファースト」を打ち出し、中東へのかかわりを縮小する公約を打ち出している。すでにシリアでは米国が手を引いたため、アサド政権の延命が決まり、ロシア、トルコ、イランの存在感が高まっている。反アサド政権勢力を支援してきたサウジにとって大きな失敗である。

3つ目は、イランの国際社会への復帰が進んでいるうえ、スンニ派であるサウジの”脇腹”にあたるイエメンで、シーア派と武力衝突が続いていることだ。イラクが米国の軍事介入によって、シーア派主導政権が誕生したうえに、サウジの西に位置するシリア、レバノンにも、シーア派勢力が台頭している。地政学的な危機が迫っている。

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