MERYは守安氏に従わなかったから成功した DeNA第三者委員会報告書でわかったこと

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ユーザー投稿型コンテンツを集めるプラットフォームを名乗りながら、検索流入によるDAUを増やすためには、運営者側がSEOマニュアルに従ってテーマ設定を行い、記事も監修することが必須だからである。すなわちSEOによるDAU増加を指示した時点で、プロバイダ責任制限法の対象外であるメディアが実態となり、同じ理由からコンテンツ自身の質に対しての意識が低くなることは自明だったともいえそうだ。

これはDeNAが運営してきたメディアに限った問題ではない。広告主、広告代理店、それらを掲載する各種メディアなど、インターネットで展開する広告価値を評価する手法そのものが変化しなければ、同種の問題は繰り返される。

皮肉なことだが、KPI偏重型のスタイルに対するアンチテーゼともいえる手法を実はMERYが実践していたことも報告書では明らかになっている。MERYを作り上げた中川氏は、守安氏が指示したSEOの徹底という指示を守らず、(自身が読者でもある)女子大生インターンに自分目線でのコンテンツを制作させた。女子大生の目線を大事にした以上、テーマ設定も内容もSEOを徹底したものではないだろう。

しかしながら、実際の読者である若い女性たちに近い位置にいるインターンたちが、自由に楽しんでコンテンツ制作を行う環境を作り出したことで、ほかの追随を許さない人気サービスへと発展した。もし中川氏が守安氏の指示どおり、SEOを徹底した記事テーマ設定、内容などで記事を作成させていたならば、MERYはここまでの人気を得られなかっただろう。

そもそも若い女性は検索エンジンで調べない

なぜなら、若い女性たちは検索エンジンを起点にトレンドを調べたりはしないからだ。いや若い女性だけではないかもしれない。現在のトレンドを探すとき、あるいは新しい何かを発見するとき、彼女たちはツイッターを検索したり、インスタグラムを眺める。その中から興味のあるテーマやアイテムを見つける。

世代やジャンルごとにインターネットの使い方は異なる。実は、MERYの運営スタイルはKPI偏重という一方の問題へ対峙するひとつの方向を示していたのである。プロバイダ責任制限法を隠れみのに責任を回避することで、画像などの著作権を軽視したコンテンツ制作スタイルは容認できないものだが、業界全体が進む方向のヒントを指し示していた点は再評価してよいのかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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