しかし、調査報告書を読んでみると、MERYこそが問題の巣窟ともいえる状況だった。
報告書で73万件近い画像が著作権侵害の可能性ありと指摘される中、そのうちの52万件近くがMERY内に存在していた。ユーザー投稿が多いと思われていたMERYだが、それでも大多数はペロリが組織した約140人におよぶ女子大生インターンが作成していた。インターンが記事執筆を行うだけでなく、その中間管理職もインターンが務めるなど、企業統治への意識がほとんど存在していなかったと考えられる。
法務部門は買収前に“問題あり”と指摘
しかも、MERYの杜撰(ずさん)ともいえる著作物(具体的には写真)の管理について、DeNAの法務部門は買収前に“問題あり”との判断を下していたことも明らかとなった。
プロバイダ責任制限法を免罪符としてメディアではなく、「プラットフォーム(利用者の投稿を受け付ける受け身のサービス)」とするため、ペロリ買収の条件としてMERYが扱う外部引用の写真を、すべて直リンク(元の権利者が公開しているサーバ上へのリンクアドレス)を使うようにすることをDeNA法務部は求めた。しかし、ペロリはこの事前の合意を履行せず(正確には履行しようとしたが、問題があって履行しなかった)、DeNAも買収時の条件であったにもかかわらず、画像の扱いに関してその後、なんらチェックを行わなかった。
現在でもMERYの後継となりうるサービスやサイトなどは他社から登場していない。DeNAも、他サイトはともかくとしてMERYだけは再開できると考えていたのではないだろうか。筆者も同じ考えだったが、画像の著作権侵害に関していえば、MERYは極めて悪質だ。“発覚しなければいい”という考えが報告書からは見え隠れする。
代表権を持つ会長へと復帰する南場智子氏は、キュレーションプラットフォーム事業の継続に関して「白紙」と述べており、まだ含みを残したままだ。しかし、同社キュレーションプラットフォームの屋台骨ともいうべきMERYの復活にはクリアすべきハードルが多そうだ。
ペロリを牽引してきた中川綾太郎氏、DeNAのキュレーションプラットフォーム執行役員でメディア統括部長兼Palette事業推進統括部長を務めた村田マリ氏は、それぞれ運営方針などは違ったが、米国で勃興した類似サービスやサイトを参考に始めた点は共通している。これは大手企業も参入している同種サービスにもいえることだ。せめて報告書が業界全体の浄化へとつながることを期待したい。
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