もうひとつの注目点は、目標や評価基準だ。こちらの問題はさらに根深い。広告を扱うインターネットメディア全体の問題でもある。インターネット広告(=収益モデル)の評価基準が従来の4マスメディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)とは決定的に異なっており、それがWELQ問題を引き起こしたと考えられるためである。
インターネット専業を標榜したうえで収益性を高めるには、コンテンツの質にこだわらず量産したうえで、検索やSNSなどからの流入を増やしてKPI(重要業績評価指標)を向上させるほうが効率はいい。インターネット時代においては、KPIの向上こそが収益を押し上げる要因だからだ。その情報を求めて定期的にチェックしている読者も、検索リンクから飛んでくる読者も「1人」であることに変わりはないのだ。
4マスの場合でも、広告メッセージを幅広く伝えるために視聴率や発行部数によって価格が決まる側面ももちろんある。しかし、一方では特別につくられた成果物に対してスポンサーする仕組みも確立されている。ドキュメンタリー番組やファッション誌などは典型例だろう。
インターネット広告の多くはKPI偏重型
ところがインターネット広告の多くはKPI(数値的な指標)偏重型だ。成果物の質やコンセプトに対するスポンサーシップがゼロというわけではないが、広告効果の測定・評価に関して数字を重視する傾向は強い。広告主自身も特定の媒体やコンテンツに対して広告を出す意識は比較的低い。こうした中でサービスやコンテンツの事業者が成果物自身の質ではなく、KPIを高める方向へと向かうのは、ある意味、必然ともいえるだろう。
報告書によると、守安功CEOが検索流入によるアクセス数増加を重視し、成長目標とする時価総額から必要なKPI値を算出。DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)の目標値を中川氏、村田氏に伝えていた。また守安氏は検索エンジンからの流入を重視し、SEO(検索エンジン最適化)技術を用いてグーグル検索からの流入に対して目標値を設定したという。
SEOによる検索流入は比較的安定した数字を作ることができ、アフィリエイト広告やネットワーク広告による売り上げを予測しやすい。このことが結果的にWELQ問題を引き起こしたことは想像に難くない。検索流入によるDAU増加を誘導するには、SEOに基づいてテーマ設定や内容を決めたコンテンツを大量に(本数が多いほどDAUは増加する)用意する必要がある。
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