「男として順調な人生」ゆえの息苦しさもある 「ロスジェネ世代」が力を抜いて生きる方法

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まずは落ち着いてください。

みなさんが若者だった頃、中年の方たちが「10年なんてあっという間だ」と言うのを聞いていて、どのように思っていましたか。ありえないと感じていたはずです。自分自身の経験を振り返ってみても、そんなことがあるはずはないと考えていました。

しかし、実際に自分が中年になってみると、この言葉の意味がよくわかるようになってきます。1990年代なんてつい昨日のことのように感じてしまいますが、あの女性アイドル「SPEED」のメンバーから国会議員が誕生するぐらいの時間が流れているわけです。

これまでの人生は、競争にさらされて前へ前へと進むばかりだったかもしれません。いまのままのペースでは、この後の10年もきっと「あっという間」に過ぎてしまいます。抱えている問題が、解決しないどころか、さらに悪くなっているはずです。

時代の流れに翻弄されて右往左往するのではなく、年を重ねて中年になり、人生の折り返し地点を迎えたいまこそ、冷静になって自分が置かれている状況を見つめ直してみませんか。

初回の相談者である40男さんは、「肩の力を抜いて、スローに生きたいという憧れはあるが、これまでとにかく気を張って生きてきたので、どうすればそれができるかわからない」ということです。

いまの40歳前後は、いわゆるロスジェネと呼ばれる世代にあたります。団塊ジュニアほどではありませんが、子どもの数は多く、受験などの競争が激しかった時代です。団塊世代がまだ現役で上が詰まっていたことに加えて、不幸なことに、ちょうど学校を卒業する頃に不景気が重なりました。その結果、正社員として就職できない若者が少なくありませんでした。

「面接に行けば内定。行かなくても内定」。こんな言葉もあったほど、お気楽に就職したバブル世代はもちろんのこと、人手不足で完全に売り手市場になっている現代の大学生に対しても不公平感を抱くのは当然です。ただ、生まれてくる時代も場所も選ぶことはできないのですから、この点についてあれこれ言っても実りはありません。同世代で愚痴るぐらいにしておきましょう。

当時の若者の就職難は、中年フリーター問題として今でも尾を引いています。しばしばその問題性が指摘されてきましたが、日本では卒業時に正社員として就職できないと、非正規の状態から抜け出すのは困難です。男女問わず、40歳を超えても不安定な働き方を余儀なくされるのは、「深刻な悩み」だといえます。

「肩の力の力を抜いて生きたい」はぜいたくな悩みか?

一方で、40男さんは無事に正社員として就職し、現在ではそれなりの立場を築いています。未婚化、晩婚化、少子化が進む日本で、20代の若さで結婚し、子どもは2人、奥様は専業主婦。サラリーマンと専業主婦、子ども2人という組み合わせは、1970年代なら「平凡」ですが、2010年代の日本では「憧れ」とさえいえるかもしれません。これだけ恵まれた環境にいるわけですから、「肩の力を抜いて生きたい」という40男さんの相談は、「ぜいたくな悩み」だと批判されてしまいそうです。

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