警察とマスコミ、偽らざる「不適切な」関係 なぜ記者クラブは警察批判ができないのか

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前出の小笠原氏は、道警記者クラブ加盟の若手記者たちについて、こう指摘している。

「事件に追いまくられて、本質的なことを考える暇がないのだろう。私はたいてい加害者の言い分を聴こうと試みるが、クラブの記者でそれをやろうとする人は非常に少ない。つまり事件記事のほとんどが警察情報と現場周辺の地取りで書かれている。

容疑者など特定の個人の顔や名前をさらすには、少なくとも本人に『名前を書きますよ』と伝えるのが礼儀と思うが、そう考えるクラブ記者はあまりいないように思う。仮に本人に接触しなくても、『こいつが犯人だ』と確信し、覚悟と責任をもって報じるなら評価できるが、冤罪があきらかになったり心身の障害などで責任能力が問題になったりすると、途端に何の謝罪もなく匿名報道に切り替えたりする」

情報独占のクラブ加盟社はそしらぬ振り

雑誌やスポーツ紙、テレビのワイドショー、外国報道機関などの記者クラブ非加盟の記者の取材は、原則、窓口を警察本部広報課に限定し、警察署などの直接取材を認めていない。報道メモの提供や記者会見への参加も認めていない。こうした方針は加盟各社の独占取材を増長し、不当な差別だとの批判がある。

2012年3月21日時点の報道連絡要領では、「記者会見については、雑誌社等の非加盟社であっても、可能な限り参加できるよう適切に対応すべきである」となっていたが、現在はその部分は削除されている。道警記者クラブ非加盟の記者は、記者会見場から完全シャットアウトする方針になった。ちなみに札幌地検ではフリーの記者の参加を認めているという。

こうした差別について、記者クラブ加盟の記者に聞いてみると、記者クラブの意向でなく、道警の方針だとの答えが返ってきた。これに対して多くの非加盟の記者は、そもそも加盟各社の記者たちは同じジャーナリストであってもこの問題には無関心を装っている、と語っている。警察が記者クラブのオープン化に消極的なのは、マスコミのコントロールを容易にするためだが、記者クラブ加盟の記者にとっても、警察情報を独占できるメリットがある。この点でも警察とマスコミの利害は一致する。

小笠原氏も道警記者クラブには加盟していない記者の1人だ。警察職員の不祥事の処分には、懲戒処分以外の「監督上の措置」が存在するとして全国の警察に情報開示請求をし、その結果を記事化した。

現実の犯罪報道にも問題がある。

「推定無罪の原則」とは、広い意味では、有罪判決が確定するまでは何人も犯罪者として取り扱われない(権利を有する)ことを意味する(国際人権規約B規約14条2項など)。この原則は国家と国民との関係を規律するもので、マスコミを直接拘束しないとも考えられているが、一般の市民感覚では、マスコミが容疑者として報道すれば、その人物は有罪であり、犯罪者であると認識する。社会の注目を集める裁判員裁判の対象となる事件に関する集中的な報道は裁判員の判断にも影響するおそれがある。

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