警察とマスコミ、偽らざる「不適切な」関係 なぜ記者クラブは警察批判ができないのか
元特捜検事の前田恒彦氏はこう指摘している。「リークやそれに基づく報道の一番の問題は、報道内容が独り歩きし、それがあたかも『真実』であるかのように、捜査当局のみならず、社会一般の間でも『既成事実』となってしまうという点だ。 現場にさまざまな重圧がかかって捜査が誤った方向に進んだり、後に引けなくなるといった危険性も出てくる。 捜査当局の幹部がマスコミにリークをして報道させた内容が実は誤りだったということになると、その幹部のみならず、マスコミの責任問題ともなる」。なお情報漏洩は地方公務員法(守秘義務)違反でもある。
こうした媒体を使って、市民に情報を伝えるマスコミが伝える事件・事故のニュースの多くは、通常、警察から「警察記者クラブ」を通じて、加盟各社に提供される情報を基に書かれている。そして警察記者クラブは警察という権力を監視する役割も担っているという。
記者クラブはわが国の独特のシステムとされる。日本新聞協会によると、「記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』」とされる。ちなみに、道警の記者クラブに加盟しているのは、新聞9社、通信社2社、テレビ・ラジオ局6社で、計17社の記者たちだ。
意に反する記事なら「出入り禁止」も
警察記者クラブにいる記者の活動の拠点となるのは、道警本部あるいは大きな警察署の庁舎内に置かれている記者室である。
日本新聞協会は「常時使用可能な記者室があり、公的機関に接近して継続取材ができることは、公権力の行使をチェックし、秘匿された情報を発掘していくためには、大いに意味がある」とし、その機能の1つに「公権力の監視と情報公開の促進」を挙げている。
記者クラブで取材する記者は、”サツまわり”と呼ばれ、取材の基本を身につけるためと称して、採用後間がない比較的経験の浅い者が多い。そうした記者たちに対し、ベテランのキャップやサブキャップが直接取材の指示や指導を行っている。さらに本社の社会部デスクと称する幹部がサツまわり記者の取材活動や原稿内容のチェックを行っている。デスクの上には、社会部長や報道本部長、さらに、編集局長が控えている。
一方、情報を提供する警察側で広報業務を所管するのは、警察本部の総務部広報課だ。警察記者クラブへの対応も広報の一環として広報課が所管している。通常は広報課のそばに記者室があり、広報課が記者クラブへの連絡・調整に当たるが、最も重要な業務は各社の警察関連の報道内容のチェックである。警察の意に反する記事や内容の誤りについては、広報課の幹部が訂正や削除を求める。それに従わない記者に対しては、事後の「取材拒否」「出入り禁止」などの処分を言い渡すこともある。
道警の「報道連絡要領」によると、報道連絡責任者は本部の各課の次席や警察署の副署長で、報道連絡担当者は広報課の幹部である。道警記者クラブの記者たちの話では、現在は各課への出入りは禁止され、話ができるのは副署長などの広報担当者だけのようだ。それも入室は許されず、廊下での対応が多いという。重大事件の場合には警察署に現場広報班を編成、広報課の報道連絡担当者を現場に派遣し、署内の現場広報班と連携しながら現場の広報に当たることになっている。
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