ベテラン弁護士が「離婚はやめろ」と説くワケ

1万人の人生からわかった「幸運」を呼ぶ法則

「わざわざ、カネにならないほうへ話を持っていくなんて、あんたは変わった弁護士やな」と、ほかの弁護士にからかわれることがあります。確かに、離婚訴訟や慰謝料請求などの問題になると弁護士の報酬が出ますが、離婚しなければ報酬はありません。でも私は、「夫婦仲が円満になって、丸く収まるのなら、それでええか」、そう思って、人生相談に乗ってきたわけです。

離婚したかった妻の気持ちが変わった瞬間

弁護士でありながらそうした“人生相談”に乗ってきたのは、私には、「争いは不運を招くが、争いを避ければ幸運が訪れる」という信念があるからです。

争いを避けて、幸運を手に入れた例をご紹介しましょう。

ある年の暑い夏の日、私は、大阪市内に住むある女性から離婚の相談を受けました。その人のご主人は土木会社に勤めているのですが、お酒が好きで帰りがいつも遅く、夫婦仲が悪かったのです。相談者である奥さんは、ご主人が遅く帰ってくるたびに腹を立てて、食事の面倒などを見てあげなかったようです。

私は「離婚はあまりいいことがありませんよ。考え直したらどうでしょう」と勧めましたが、「もう我慢ができません、絶対に離婚します」と決意は固いようでした。

彼女は、私の事務所でひとしきり夫への不満を話した後、1カ月後、具体的な離婚手続きを進めるため再来所する約束をされて帰っていきました。

ところが、1カ月が経ち約束の日に事務所へ来られたとき、彼女の気持ちはまったく変わっていたのです。

「事情が変わったから、離婚はしません」

けろっとして、そう言いました。離婚するものだとばかり思っていた私は驚きました。

でも、それは何よりもいいことだと思い、彼女になぜ気持ちが変わったのか聞いたのです。すると、奥さんが話した事情とはこうでした。

彼女が電車に乗っていたとき、偶然、電車の窓からご主人の姿を見つけました。それは暑い昼下がりのことだったのですが、ご主人は作業服を着て、道路工事の作業をしていたのです。作業服の厚手の生地の色が変わって見えるほど大量の汗を垂らしながら、工事をしていたのです。

「ああ、お父さん、大変やな。あんなんして、毎日、働いてたんや」

そう思ったそうです。

昼間実際に働く姿を目にして、奥さんはご主人の仕事がいかに大変なものなのか、初めて知りました。その大変な仕事のおかげで、自分が生活できているとわかったわけです。

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