部下だけではない。どんな人に対しても温かい思いをもつ、心配りをする。うん、出来るかどうかではなく、せんといかんわけや。まず、そういう人柄でないといかんね。
それから、誠実でないとな。ものごとをまじめに考える。一生懸命考える。そしてそれに取り組む。他人にはとやかく言うけれど、自分はせんと。いいことを言うけれど、自分は実行せんと。人前ではまじめにやるけれど、陰では手を抜くと。そういうことでは誠実とは言えんやろ。
けじめもつけん。これもあかんわね。誠実でないな。時間は守らん。公私のけじめはつけん。それでいていかに自分を偉そうに見せるかということに腐心する。こういう経営者が案外、きみ、多いんやで。
つねに素直な心で、凛として
それから経営者の人柄として、堂々としておるということも大事なことやな。
部下に責任を押しつける。いやな仕事は部下にやらせる。そういうことでは立派な経営者とは言えんね。
これからの時代は複雑な時代や。部下がやる仕事も時として、というより、往々にしてうまくいかんことが多くなる。部下の失敗をわが失敗として堂々と責任をとっていく。度胸を決めて、よっしゃ、わしに任せておけ。心配するな。あとは引き受けてやる、というぐらいのことが言えるようでないとな。一城の主として堂々と相手と対峙するということが大事やで。
そういう堂々とした経営者の姿勢を見て社員の人たちも、よし、おれたちもしっかり胸を張って仕事に取り組もうということになる。北風に向かって、つねに凛としておらんといかんのや、経営者は。
それからな、もうひとつ、付け加えれば、経営者は素直でないといかんということやな。
これはもう何回も、きょう、きみに話しておるからな、もう、話せんでもええと思うけどな。けど、極論すれば、この素直な心をもし完全に身につけておれば、いままでわしが言うてきたことは、なんもいらんとも言えるわけや。そやろ。
素直な心であれば、なにが正しいか、なにをしなければならないのか、それがわかるわけやから、この素直な心を身につけることに成功するならば、もうこれだけで十分だと言える。それほどのもんやね。
まあ、これからの経営者は哲学があって、知恵も出し、迅速に動き、人柄もよくないといかんということになるから、たいへんやで。いわば活動する哲人ということやな。たいへんやけど、経営者の立場に立った人はこういうことを心掛け、できるだけこういう条件に近づくよう、努力せんといかんわね。それがかなわん、たいへんやというならば、みずから経営者を辞退せんとあかんわ。
うん? きみ、自信がない? そう思うなら、経営者にならんほうがええで。もっともわしもこれからの経営者であれば、あまりやりたい仕事ではないかもしれんな。
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