客の4割が男性、超人気「和製チョコ」の正体 カカオ80%以上でも苦くない

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しかしカカオ率85%の同店のチョコレートを試してみたが、まず豆の持つ自然な甘みが感じられ、チョコレート特有のビターさが加わって、意外なほど食べやすい。

さて、カカオ豆の生産に関しては、児童労働や農家の貧困が世界的問題となっている。フェアトレードやNGO基金などの取り組みは進められているが、抜本的な解決にまでは至っていない。

「カカオ豆の生産者がチョコレートを食べたことがない、というのが当たり前の話。多くの人は、カカオ豆が何になるかわからないで作っているのです」(山下氏)

現地でのチョコレート作りのワークショップ(写真:ミニマル提供)

改善策の一助として、山下氏はインドネシアやフィリピンなどの生産地でチョコレート作りのワークショップを開催するなどして、現地の人に「知識のフィードバック」を行っているという。また、発酵から乾燥の過程がうまく行き、良質な原料が生産できたときには、普通より高い買値をつけるようにしている。

「もちろん、大手の流通業者は大量に買い付けるので、量が増えた分、収入も増えます。でもそのおカネを得るためには、一家総出で死にものぐるいで働いて、ノルマをこなさなければなりません。ノウハウを学べて、自分たちのもの作りに誇りが持てるためモチベーション高く働けると、私たちとの取引を選ぶ農家も多いです」(山下氏)

産地に赴き、希少な原料を取引する

こうした取り組みは社会的な意義も高いと思われるが、産地に赴き、生産者と地道にコミュニケーションをしながらチョコレート作りをすることで、ミニマル側にも大きなメリットがある。希少な原料を取引させてもらえることもそのひとつだ。たとえば、同店でいちばんの高値(税込み1512円)がつけられている「フルーティ ベリーライク(コロンビア)」というチョコレート。アルアコ族という少数民族が古来から守ってきたカカオ豆から作られている。たいへん稀少なもので「チョコレートの質や取り組み姿勢が評価され、使わせてもらえるようになった」(山下氏)という。

以上は、同店の素材へのこだわりの部分。しかし素材だけで勝負というわけではない。もともとコンサルティング業を営み、「3年間で売り上げ15億円のビジネスを作った」という実績を持つ山下氏だけに、“売れる仕掛け”も次々に打ち出している。

ひとつには、商品それぞれにプロフィールを付け加えたこと。チョコレートの味わいを「NUTTY(ナッツ系)」「FRUITY(フルーツ系)」「SAVORY(香り系)」の3カテゴリーに分け、さらにその中でもベリーや柑橘、などと細かく分類した「フレーバー・ホイール」を考案。それに加え、カカオ濃度、ひき方、ロースト度合い、産地など商品の情報を詳細に書いた商品カードを、それぞれの商品につけている。ワインのテイスティングを思い浮かべるとわかりやすいだろう。オタク心をくすぐる仕掛けで、いかにも男性が好みそうだ。

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