トランプ氏とバノン氏は、EUを弱体化させ、最終的には解体させたいと考えているようだ。トランプ氏がEUを敵視し、不適切な人物を駐EU大使に指名し、トゥスクEU大統領に「次に離脱する国はどこだ?」との悪質な質問をしている理由は、思想的なもの以外に考えられない。
地政学的に見ると、EUはこれまで、米国の政治的・軍事的権力をほぼ無償で拡大させてきた。NATO(北大西洋条約機構)とともに、ロシアの膨張を抑える壁の役割を果たし、米国がロシアとの「熱い戦争」に巻き込まれるのを防いできた。日本と並び信頼できる経済的な大勢力であるEUとの友好関係を通じ、米国は「国際社会」での発言力を保ってきた。
西側の国際秩序解体は、ナショナリストの目から見ても、米国の国益に反する。真の「米国第一」を掲げる政権であれば、トランプ政権のように、米国の国力増大に貢献してきたEUやNATOを解体しようとは、決してしないだろう。
トランプ氏とバノン氏の思想に関する私の理解が当たっているとすれば、彼らは今年のフランス大統領選挙で国民戦線のルペン党首を支援し、英国のEUからの完全離脱を後押しするだろう。トランプ氏はまた、2014年のクリミア併合を受けて米国が発動した対ロ制裁を解除する可能性が高い。 結局のところ、ロシアのプーチン大統領とバノン氏は、思想的に見て双子のような存在だ。
トランプ政権の「守ってやる」はあてにできない
さらに、マティス米国防長官が東アジア訪問時に韓国や日本と交わした安全保障上の約束も、真に受けるべきではない。こうした約束の信頼性は、ポーランドのドゥダ大統領にトランプ氏が「ポーランドは米国に頼ることができる」と言ったことと同程度に過ぎない。
米国人は、従順ではない当局者を解任し、大統領令の執行を差し止めた裁判所の命令を無視するトランプ政権を監視する必要がある。トランプの不安定な外交政策は貿易戦争にまでは至らないにしても、遅かれ早かれ、世界経済に混乱や不確実性、投資減少をもたらすだろう。そして、同氏が法の支配を弱体化させることに伴い、米国内では、減税や規制緩和による恩恵が打ち消されるだろう。
この結果、トランプ氏と共和党は2018年の中間選挙や2020年の大統領選で敗北する可能性がある。トランプ氏が弾劾される恐れすらある。
バノン氏はトランプ氏を再選させるよりも、ポピュリストの「運動」を永続化させることに関心があるのかもしれない。バノン氏が米国の政治風景を変えたいのであれば、トランプ氏が弾劾されるか落選すれば、運動にとって理想的な殉教者になり得るからだ。その場合、トランプ氏の運命がどうなろうと、バノン氏にとって大した意義はない。
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