松下幸之助「知恵は汗のなかから生まれる」

経営の神様が問わず語りに語ったこと

それですぐに読み取れるようになるかというと、なかなか難しいな。けどな、そういう心持ちで、なん度もなん度もやっておれば、自然に身に付くようになる、先が読めるようになるんやないかな。

決断できるか、しかも速く

それから次の条件は、決断する力を持っておることやな。

先も言うたけどな、いまの時代は超複雑、超高速な社会であるわけや。ひとつの出来事があっという間に過ぎ去ってしまう。こういう時代に、ある問題に対して決断をせんかったら、すぐに混乱してしまって、どうにもならなくなるな。右にするか、左にするか、決断せんかったら部下は動きがとれんもんな。事が前に進まんがな。

しかも、その決断が速くないといかん。きみ、技術の進歩ひとつとっても、驚くべき速さや。たとえば電卓な、あれは昭和39年にある会社が53万5000円で売り出したんや。それが二十数年後の今日、いくらになっておるかといえば、性能がさらによくなっていながらたった1000円や。535分の1になっておる。これを単純に計算すると、だいたい2週間で1回ずつ値段が下がってきたことになる。おそるべき技術の速さやな。

ワープロでもそやで。昭和53年に630万円で販売されたんやけど、いまは4万円ぐらいで買えるようになっておるわね。160分の1やね。これまたほぼ2週間で1回、値段が下がっておるんや。

技術だけではない、世の中の移り変わりも時代の変化も、誰も予測出来んような速さでどんどんと変わっていっておるな。そういうなかで勇気をもって決断をせんといかんわけやな。

ひとつの問題が起こって、さあ、どうしようかなと、腕を組んでしばし考えておるというようなことでは、これからの競争には勝てんな。決断できるか、しかも速くということが2つ目の条件であるということやな。

それからどれだけ知恵を集められるか、情報を集める力があるかどうかということやろうな。

今日は知恵のあふれている時代やね。こんなに知恵が世の中にあふれたときはなかった。だから知恵をあつめた者が強いわな。しかもいい情報を集められるかということ、これが難しいな。

そのためにも前にも言ったとおり経営者に知恵を集める姿勢と心構えがないといかんね。衆知を集めるということや。しかも集めるだけではいかんし、いい情報を見分けるだけでもあかんな。

それらのいい知恵をいかに組み合わせてさらに新しい、いい知恵を生み出すか。あるいはそれらの知恵を、情報をもとにして、新しい独創的な知恵を生み出すか、いわば創造力というものもないといかんな。そうでなければ、いかにいい知恵でもやな、それはこういう速い時代ではそのときにすでに古い、陳腐化した知恵というか、情報になっておるからや。

情報を集める力を持っておるか、いい情報を見分ける力を持っておるか、さらには、情報を組み立てて新しい、独創的な知恵をつくりだすことができるか、そういうことが求められるわね、これからの経営者にはな。

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