過激な言動で世界を揺るがし続ける米新大統領、ドナルド・トランプ。これまで、本連載では、その巧みな人心扇動術や老獪な交渉術について分析してきた。
分析する過程で、これまでの政治家と同じ物差しで見てはいけないということはわかってきたが、まだまだ、解せないことばかり。そこで今回は、彼の言動からその「頭の中」をのぞき、いったい何がトランプを突き動かしているのかに迫ってみた。
見えてきたのは至極単純だが、厄介な思考パターンだ。日本は、このアノマリー(法則・理論からみて異常、または説明できない事象や個体等、科学的常識、原則からは説明できない逸脱)にどう対峙すべきなのか。
根本となる価値観が見えにくい
コミュニケーションの基本動作はまず「(相手となる)ターゲットを知る」ことだ。その意味でも、トランプという人は実に興味深い。常識を超えた言動は、われわれの脳裏に蓄積された「政治家」像からは大きく乖離する。不動産業やショービジネスという世界の中で培ってきた独特のコミュ戦法によって、「世界最高の権力者」の地位を手に入れたわけだが、その根本となる価値観や主義・主張はなかなか見えにくい。これまでの共和党的価値観からも大きく外れ、一貫性があるようでまったくない思いつきのように見える政策も多い。そんな常軌を逸した言動に、いったいどのような軸があるのだろうか。
彼のツイートや発言につぶさに観察すると、気づくのは、とにかく「自分が大好き」であることだ。「神が作り上げた大統領の中でも、最も雇用を生み出すのは自分」「私はハンサムだ」「私は偉大だ」。口を開けば、ひたすらに「自分がいかにスゴイか」のアピールがあふれ出してくる。
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