田中:夫も家事に参加するべき、という意識は、ここ40年ぐらいかけてじわじわ普及してきたものです。NHK放送文化研究所の調査によると、1973年時点では、夫の家事参加に対して38%が「すべきではない」と考えているんです。それが2013年現在では、89%が「するのが当然」になっているんですね。
男が家事・育児をするのは”何かをあきらめること”?
ところが、男の家事育児に対する意識はこんなに変わっても、男の働き方はまったく変わっていない。特に会社員だと、長時間労働であることに変わりはないんです。だから、女性が働いて出世していこうとすると、誰かが(家庭に)帰ってこなければならないんです。けれど、「誰が家庭に帰ってくるのか」という議論がない。
鈴木:そうですね。男が家事・育児をやるというのは、一般的に何かをあきらめなくてはいけないということです。
僕の知り合いに1人、主夫がいます。妻はテレビ局勤務、夫は元芸人さんで、奥さんに「仕事をしなくていい」と言われたらしいんですよ。だから、毎日ご飯を作って、育児をしている。
彼の場合、自分が社会で活躍すること、出世することにもともと欲がなくて、あきらめた部分もあると思います。だから、主夫をするのは、彼の性格にすごく合っているんだと思うんですけど。世間では、家事や育児は女性がやるもの、というイメージがにおいすぎるんですよね。
田中:中高年の男性がいちばん心配しているステータスは「無職」です。男で中年なのに働いてないというのは、彼らの存在意義を大きく揺るがすこと。もちろん、働くといっても不安定な職はダメです。「え、中年でフリーター?」と思われるのが怖いんですね。
男性が働くことにこだわるのは、結局一生懸命働いていれば周りが安心するというのが大きいんです。女性の場合は逆で、一生懸命働いていると心配されて、子どものお世話をして、巾着を手作りしたと言うと、「いいお母さんだね」と言われる。女も仕事を持つようになったのに、「男は仕事、女は家庭」というルールは、現在でもあまり変わっていないというところに問題があります。
鈴木:僕が1年間仕事を休めたのは、40歳を過ぎていたからというのもある。周囲が僕の状況を理解して協力してくれたからこそ、休むことができた。経済的にある程度蓄えもあって、(仕事で)戻ってくる場所があるという自信もあった。
だからこそ、放送作家というキャリアからひととき外れても、人間としてのステージを1つ上がれるんじゃないか、見える景色が変わるんじゃないか、という期待をもって休むことができたんです。
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