分断とねじれ、トランプの米国はどこへ行く "正統性"や支持率なき船出、その向かう先

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公民権運動の指導者で、リベラル派を代表する人物である民主党のジョン・ルイス下院議員はNBCの報道番組に出演し、ロシアの諜報機関が大統領選挙に介入したことを根拠に「私はこの次期大統領を正当な大統領と認めない」と表明した。さらに「セッションズ上院議員は人種差別主義者である」と、トランプ人事を批判し、大統領就任式に欠席することを明らかにした。

同議員の発言を受けて多くの民主党議員が式典への不参加を表明した。たとえばアル・グリーン下院議員は「私の良心が就任式典に出席するなと言っている」と語り、ルシール・ロイバル‐アラード議員は「式典に参加するかどうか一生懸命考えた。なぜなら党派に関係なく、大統領に敬意を表すべきだからだ。それでも次期大統領が女性やメキシコ人、イスラム教徒に対して行った侮蔑的な言葉は私の価値観に反する。私は式典に出席しない」と語っている。最終的な人数は確認できなかったが、50名以上の民主党議員は式典に出席しなかったと思われる。

経済的には幸運に恵まれた門出

だが、悪いことばかりではない。トランプ政権はかつてないほどの幸運に恵まれた出航をすることができるのである。

ブッシュ政権は発足直後にITバブルが崩壊し、アメリカ経済は不況に突入し、不況対策に追われた。オバマ政権は、リーマンショック後の深刻な不況に対応しなければならなかった。巨額の不良債権を抱える銀行救済、経営不振のGMなどの自動車会社の救済という後ろ向きの対策に追われた。

それに対して、トランプ政権は、アメリカ経済は不況から脱しつつある最高の状況で発足した。オバマ政権が発足する前の1年間の経済成長率はマイナス2.7%であったが、トランプ政権誕生前の1年間の経済成長率は1.93%であった。昨年12月の失業率は4.7%で、ほぼ完全雇用の水準であった。昨年の家計所得の増加率も1968年以来最高であった。

追い風の中でトランプ政権は余裕をもって大胆な政策を打てる環境にある。まだトランプ政権の政策の全体像は見えてこないが、選挙運動中に様々な政策案が提言されている。政権発足後100日間は、一気に政策を実現する絶好の機会である。では、トランプ政権は最初の100日にどんな政策を打ち出そうとしているのだろうか。

トランプ大統領は選挙中に「私が大統領に就任した最初の日に、政府はワシントンの腐敗と特別な利権を一掃するために6つの対策を講じる」と発言している。具体的には、次の6つの行動を取ると語っている。

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