分断とねじれ、トランプの米国はどこへ行く

"正統性"や支持率なき船出、その向かう先

さらにトランプ次期大統領は「同じ政権発足初日に講ずるアメリカの労働者を守る7つの行動を取る」と、かなり過激な対策を掲げている。

第1の行動=NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉あるいは同条約第2205条項に基づいて脱退する意図を表明する
第2の行動=TPP(環太平洋経済連携協定)から撤退することを表明する
第3の行動=財務長官に中国を為替相場操作国に指定するように指示する
第4の行動=商務長官と米通商代表部代表にアメリカの労働者に不公平な影響を与えている外国の貿易上の権利乱用を明らかにし、アメリカの法律と国際法で許容されているすべての手段を駆使して、そうした乱用を即座にやめさせるように指示する
第5の行動=シェール・オイルや天然ガス、クリーン石炭を含む雇用を創出する50兆ドルの価値を持つアメリカのエネルギーの産出制限を廃止する
第6の行動=キーストーン・パイプラインなどエネルギー・インフラ計画を進めることを認める
第7の行動=国連の気候変動プログラムに対する数十億ドルの支払いをキャンセルし、その資金をアメリカの水と環境インフラを修復するために使う

TPP離脱とNAFTA再交渉は実現へ

第1の行動のNAFTAの再交渉、あるいは脱退はかなりの現実性のある政策である。協定の第2205条は「脱退に関する規定」の条文である。同条文には「他の条約国に対して書面で脱退を通告した6か月後に脱退が認められる」と書かれている。条約国に留まるか、脱退するかは加盟国の裁量で決めることができる。脱退を阻止する規定は存在しない。トランプ大統領は、いきなり脱退を表明するかどうか分からないが、最低限、条約の内容に関する再交渉を求めるだろう。カナダとメキシコが再交渉に応じなければ、脱退の道を選ぶ可能性は極めて大きい。

そして第2の行動については就任当日、ホワイトハウスのホームページ上でTPPからの離脱を正式表明した。

トランプ政権の通商政策は二国間交渉が柱になり、より強くアメリカの利害を主張するようになろう。それは日本にとって悪夢の再来である。日米通商問題は、常に二国間協議に委ねられてきた。日米繊維交渉に始まり、カラーテレビ、鉄鋼、自動車、半導体と、日本は常に譲歩を迫られてきた。トランプ大統領は中国の通商政策を厳しく批判しているが、貿易黒字を計上する日本も同様に攻撃の対象になる可能性は大きい。トランプ大統領にとって貿易理論はまったく意味をなさない。安倍首相は多角的貿易協定の必要性と意味を訴えると発言しているが、それは無駄な努力だろう。

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