中国軍艦が日本近海を堂々と航行できる根因 日本列島の海峡には「大きな穴」があいている

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しかし、商船、大型タンカー等の自由な航行を保障することが狙いであれば、何も公海(特定海峡)とする必要はない。領海内で認められる無害通航権でも十分だ。にもかかわらず、なぜ「特定海峡」を設置したのだろうか。

実はここには“別の理由”があった。領海法について審議された1977年3月18日の衆院予算委員会で、公明党の近江巳記夫衆院議員がこれについてすでに言及している。

「非核3原則」という事情があった

「これを再び明らかにしたのが、1987年~1989年まで外務事務次官を務めた故・村田良平氏。民主党政権時に岡田克也外相が核密約問題に取り組んでいた時、村田氏は核を搭載した米国艦船が5海峡を航行しても非核3原則で禁止される『持ち込み』に反しないように、政府があえて領海の幅を狭めたと証言した」

このように話す民進党の長島昭久衆院議員は、野田第3次改造内閣で防衛副大臣を務めた安全保障の専門家だ。そもそも核の搭載艦が領海を通過することが非核3原則の「持ち込み」に該当するという政府の見解に疑問を持つ長島氏は、「それよりも、今ある危機を考えるべき。2000年5月に中国海軍のヤンビン級砕氷艦兼情報収集艦1隻が津軽海峡を1往復半したが、これを通常の通航権の行使といえるのか。情報収集をしていたのではないか」と危機感を募らせる。

すでに領海法制定から40年が過ぎ、日本をとりまく環境も激変した。中国艦船が近年、何隻も日本近海へ進出しているのはその結果だ。それでもなお、「特定海峡」を海幅3カイリのままにしておくことのメリット・デメリットを真剣に考えるべきだろう。

だが政府の腰は重く、菅義偉官房長官は1月13日の会見で「見直すつもりはない」と述べるにとどまっている。「それでは中国につけ込まれるだけ」というのが前述の緒方氏の主張だ。

「これまで日本は『特定海峡』の間に公海を作ることで、問題から逃げていた。もっとも国際海峡について各国の実行の積み重ねがなく、不安定な部分もある。だからこそ、日本は正面から国際海峡制度に向き合い、制度整備を主導すべきだと思う」

1月20日に始動するトランプ政権は、極東におけるアメリカの安全保障政策を大きく替える可能性がある。その一方で極東における中国の比重は高まり、その脅威はますます増大していくだろう。中国にとって太平洋に通じる重要な航路であり強い反発が予想される。しかし、特定海峡見直しの議論は避けるべきではないだろう。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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