経済失速でも止まらない、中国鉄鋼増産の波紋 あふれ出た在庫がアジアの鋼材市場を攪乱

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構造的な問題に拍車をかけているのが、足元の市況悪化で資金繰りに窮した民営メーカーだ。当座の運転資金を求めて、ますます生産量を増大。その結果、価格はさらに下落している。「同じ悪循環がこの数年間ずっと続いている」(新日鉄住金幹部)。事態は当面収束しそうにない。

影響は中国国内にとどまらない。最大の懸案事項は、中国からあふれ出した鋼材がどこに向かうかだ。

一時は日本国内にも中国材が流入した。為替が円安に傾いたことでこうした動きは一服しつつあるが、別の問題が浮上している。

東南アジアの市況悪化も

製造業の海外移転が続き、日本国内の需要増加が見込めない中、日本の鉄鋼メーカーにとって海外市場の開拓は急務。その有望な候補の一つが東南アジアだ。

新日鉄住金はタイで自動車用鋼板の製造設備を増強。JFEスチールもベトナムで高炉建設を計画中だ。技術面で強みを持つ自動車用鋼板の供給体制をいち早く整備し、顧客の囲い込みを狙ったものだ。

しかし、経済成長著しい東南アジアは、過剰在庫に悩む中国にとっても格好の売り込み先。中国からASEAN10カ国への12年の鋼材輸出量は、前年比で5割も増加した。

現状では、中国から出荷されているのは棒鋼や形鋼といった建材分野が中心。日本メーカーが得意とする製造業向けの高級鋼と競合する場面は少ない。だが、中国材の過剰な流入によって汎用品の市況が悪化すれば、それに引きずられる形で、鋼材全般の価格が下落してしまう。

中国経済の停滞が長引けば、東南アジアへの鋼材出荷は増え続ける。逆に、経済が持ち直して最新鋭の製鉄所が早期に稼働を始めると、技術面での日本の優位が揺らぐ可能性も出てくる。いずれの道を歩むにせよ、日本メーカーは生き残りに向けた隘路を進むことになる。

週刊東洋経済2013年7月13日号

小河 眞与 東洋経済 記者
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