新日鉄住金vs.ポスコ 電磁鋼板の製造技術めぐり公判始まる
10月25日、いよいよ注目の裁判が始まった。電磁鋼板の製造技術の不正取得を巡り、4月に新日本製鉄(10月1日付で住友金属工業と統合し、新日鉄住金)が韓国の鉄鋼最大手ポスコを訴えた裁判である。同製品の販売差し止めと1000億円の損害賠償を求めたもので、訴訟相手は、ポスコ、その日本法人であるポスコジャパン、そして技術を流出させたとされる新日鉄の元社員である。
今回の提訴は、変圧器などに使われる省エネ効率の優れた高性能鋼板である方向性電磁鋼板の製造技術の不正取得に対するもの。方向性電磁鋼板については、新日鉄は1990年代から製品を市場投入してきた世界トップメーカーであり、欧米の競合メーカーも技術が確立できず、新日鉄からライセンス供与を受けて製造してきた経緯がある。
その方向性電磁鋼板について、ポスコは新日鉄のライセンス供与を受けずに開発し市場に投入、シェアを急激に高めてきた。新日鉄側には、なぜポスコがつくれるのかという疑念がつねにあったという。
今回、提訴に当たって決め手となったのは、2007年に起きた韓国での産業スパイ事件。ポスコの技術を中国の宝鋼集団に売ったとして、ポスコの元社員が告訴された。その裁判の過程で元社員が、流出させていたのはポスコの技術ではなく「新日鉄から入手したもの」と証言したことから、不正取得の疑念が確信に変わった。技術を流出させた新日鉄の元技術者の名前も特定した。
その後、ポスコに対して、新日鉄は警告などを行ってきたものの、望ましい対応が得られなかった。昨年末に日本の裁判所による証拠保全命令が出され、新日鉄の元技術者から証拠書類を差し押さえることができたため、訴訟に進んだ。
技術流出が、ポスコだけにとどまらず、中国最大手である宝鋼集団に流れるという「2次流出」にも、新日鉄関係者は警戒を強めた。グループ各社には、技術流出に注意するよう、徹底がされたともいう。