鉄鋼業界で総合力世界一を目指す 宗岡正二・新日鉄住金会長兼CEO
世紀の大合併となった新日鉄住金。粗鋼生産量でアルセロール・ミタルに次ぐ世界2位。技術など総合力では世界一ともいわれる巨大鉄鋼メーカーは10月1日、ついにスタートする。合併直前に新日本製鉄の宗岡正二社長(新日鉄住金会長兼CEO)が、その思いを語った。
両社からなる統合準備委員会というものをつくってきたが、ベスト・フォア・ザ・ニューカンパニーという旗印の下、両社の人間が濃密に仕事をしてくれ、今回の統合にこぎ着けることができた。
問題意識としてあったのは、日本の鉄鋼需要がこれ以上伸びにくい一方で世界の鉄鋼需要は伸びること。原材料の価格、コストが高止まり状態であること。そして中国での需給ギャップだ。
こうした背景の中、世界で勝ち残っていくために、両社の持つ経営資源を統合して、成長分野へ投入しようということになった。1年余りの間、意見交換と許される範囲で情報交換をする中で、総合力世界ナンバーワンを実現できると確信を深めているところ。
経営環境は、昨年2月の統合発表時よりも厳しくなっている。日本でいえば、超円高、福島原発事故に起因するエネルギーの供給制約、コスト問題が発生している。
それでも、グローバルマーケットの中で圧倒的な存在感を示しうる鉄鋼メーカーになれると確信している。
日本の産業の中でも、国際マーケットで勝ち残っていくためには、統合・再編が必要とされている。私どもはその先鞭をつけた。国際市場で勝ち残る統合再編のモデルケースになるよう頑張っていきたい。
友野(宏)社長とも必ず月に一回は意見交換をし、双方の問題意識はお互いにわかっている。
--供給過剰解消に向けアジアの足並みはそろいそう?
需給ギャップが収まるにはしばらく時間がかかる。ただ、われわれがなすべきこと、技術力、コスト競争力、グローバル展開をどうするか手を打っていけば、われわれは生き残っていける。
需給ギャップの大きなところは中国から発生している。これは中国自身も認識している。中国の11次5カ年計画でも「中国は鉄鋼大国であるけれど、鉄鋼強国ではない。したがって、中小、老朽ミルを統廃合し、大型ミルに再編し直し、環境・省エネ技術を含め体質強化を図らなければいけない」としている。
ただ、現実にはそうなっていない。なぜか。中国は市場経済による自然淘汰が働きづらいということ。国営企業については、国からの支援があるだろう。また、地方の鉄鋼メーカーは、地方のGDPや雇用を支えている。そのため地方政府は支援してしまう。
新たな政権が強力な政策なり行政指導を行うのかで変わってくるのではないか。
--海外高炉計画は?
今のような為替が続くのであれば、海外で鉄源を用意することは重要だと、今でも思っている。
ただ、周りを見れば余剰になっている。新たにカネをかけて構えるのがいいのか、あるいは別の手立てで手に入れることが可能なのか。いろいろな可能性を探していけばいいのではと思う。新設だけが最適な方策ではない。
経済的でフィージブルであれば、当然検討する。
--買うという選択肢もある?
それはあると思う。