輸出入が同額でも「円安で企業収益増」の理由 円高は企業が損して消費者が助かる
日銀が12月14日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス10となり、前回調査(9月)のプラス6から4ポイント改善しました。改善は6四半期、つまり1年半ぶりです。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値です。今回のニュースを報じたNHK NEWS WEBは、「米国経済が堅調なことや、トランプ次期大統領の経済政策への期待を背景に円安ドル高が進み、輸出関連の企業を中心に景気の見方が改善したため」(12月14日)などと解説しています。
前回の短観と比べると、「円安になったから企業の業況感が改善した」というのが一般的な評価といえるでしょう。なぜ円安になると企業の業況感が改善するのでしょうか。
日銀短観の業況判断DIは、円高で悪化、円安で改善
最近は、景気の大きな流れが「おおむね横ばい」となっています。通常は、企業の収益や業況感が景気の大きな流れに影響されますが、最近は短期的な為替の変動が企業収益等に与える影響を読み取るチャンスだといえます。
そこで、為替が円高に動いていた6月当時と円安に動いている直近の業況判断DIを観察することで、企業の業況感が為替の動きでどのように変化するのかを見てみましょう。具体的には、日銀短観の業況判断DIの、前回(3カ月前の調査)からの変化幅を観察することにします。
円高が進行していた6月当時の業況判断DI(7月発表の6月短観)を見ると、製造業では、大企業がプラスマイナスゼロ、中堅企業がマイナス4、中小企業がマイナス1、非製造業は、大企業がマイナス3、中堅企業がマイナス3、中小企業がマイナス4と、3カ月前の調査と比べて全体的に悪化しました。
大企業製造業がマイナスを免れたのは、石油・石炭製品がプラス22となっているからですが、これは特殊要因なので、これを除けば全体的に悪化したといえるでしょう。
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