円安で上昇する日本株に潜む「円高リスク」 FRBの「2017年予想」には「死角」が存在する

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目先はさらなるドル高が進むように見えるし、実際にそうなるかもしれないが、見逃されているリスクがある(写真:sasaki106/PIXTA)

12月14日の米国株は8日ぶりに反落した。13・14日開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、雇用の堅調な伸びや物価上昇を受けて、政策金利を0.25%引き上げ、0.50~0.75%とすることを決めたが、来年以降に利上げペースを加速させる可能性が示されたことが嫌気された。一方、15日の日経平均株価は円安を好感し上昇後、利益確定売りも出て一時はマイナスに転じた。だが結局は1万9273円(前日比20円高)で引け、年初来高値を更新した。

「利上げ継続」のうちは、株価も上昇へ

市場は事前に昨年12月以来となる利上げを織り込む一方、トランプ次期米大統領が巨額インフラ投資や大型減税による景気刺激策を掲げる中で、来年は2回の利上げを予想していた。FOMCでは予想通りに0.25%の利上げが決定されたが、FOMC参加者による金利見通しでは2017年の利上げ回数が3回となり、9月時点の2回から引き上げられた。

トランプ氏の経済政策が明確になるまで利上げペースは2回で据え置かれるとみていていただけに、これがサプライズとなったようだ。また、景気見通しがほぼ変わらずだったことも、同様であろう。しかし、振り返ると、トランプ氏が大統領選に勝利した以降、同氏の政策への期待が先行する中でNYダウ平均は過去最高値を16回も更新し、節目の2万ドル突破を目前にするところまで駆け上がっていた。利食いのきっかけを探していたところに、FOMCでの決定が格好の手仕舞いの材料になったと考えるべきだろう。

今回の利上げ決定は全会一致だった。FRB関係者の金利見通しでは、来年は3回の利上げを想定し、利上げペースが加速する可能性が示されたが、イエレン議長は会見で「利上げは米国経済への自信の表れ」と強調している。

金利の引き上げは景気が良いことの裏返しであり、金利引き上げ自体はネガティブではないだろう。過去の米国株の動きを見ても、利上げが続いているうちは、株価は上昇を続けている。

まだ先の話だろうが、問題は継続的な利上げができなくなったときである。つまり、景気のピークを過ぎたと感じられるときや、景気後退に入ったと考えられるときである。その際には、利上げは確実に回避される。利上げ見送りが続けば、結果的に株価はピークアウトし、下落に向かっていることになる。現時点でその可能性を念頭に入れるのは早計過ぎるだろう。

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