円安で上昇する日本株に潜む「円高リスク」

FRBの「2017年予想」には「死角」が存在する

ただし、実はFRBにとっては、トランプ政権の誕生は大歓迎だろう。つまり、これまで景気や株価の下支えの責任を一手に引き受けてきたが、トランプ氏が掲げるインフラ投資や減税などがいまや株式市場の最大の関心事になっており、これが景気を押し上げるのであれば、まさに金融政策から財政政策へのバトンタッチが進むことになる。

結果的に、イエレン議長を含めたFRBの責任の度合いが大きく低下することになり、負担は大幅に減ることになる。昨年の市場混乱時における自身の発言で体調を崩したとも言われたイエレン議長にとって、トランプ政権の誕生はむしろ歓迎すべき出来事ともいえるだろう。

FRBの政策が後手に回ると円高→日本株安の流れに

一つ懸念があるとすれば、インフレ率の上昇リスクだ。FOMCで示された個人消費支出(PCE)物価指数でみたインフレ率の見通しは、2016年10~12月期が前年同期比で1.5%に上方修正されたが、2017年同期は1.9%で変わらずとなっている。さらにコアPCE(エネルギーと食品を除いた物価指数)は2016年が1.7%、2017年が1.8%と修正はなかった。そのうえで、目標の2.0%に達するのは、全体もコアも前回同様、2018年としている。

しかし、この見方はかなり甘いように思われる。米国の消費者物価指数(CPI)は原油価格ときわめて高い連動性がある。その原油価格は来年初めになれば、前年比で50%以上の上昇率になる。これは、CPIが前年比で2.5%から3%上昇に相当することになる。

そうなると、FRBが想定している以上のスピードでインフレが加速し、FRBの政策がいわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」(周回遅れ)となる可能性がある。長期金利の上昇は続きそうだが、それを上回るペースでのインフレ率の上昇となれば、米国の実質金利はむしろ低下する可能性がある。

一方、日銀は指値オペで長期金利を抑える一方、日本のCPIは原油高に対して半年から1年遅れで上昇するため、結果的に日米の実質金利差はむしろ縮小することになる。

つまり、現在のドル高基調は理論的には説明がつかない、あくまで短期のフローで決まっている可能性が高い。理論値では102円~103円程度でよいはずのドル円が、いまや117円台をつけている。

現在の日本株の上昇が円安を背景としたものであれば、今後のドル高修正の動きには、相応の注意が必要といえそうである。また日銀もインフレ率の上昇から政策の強制的な変更を余儀なくされる可能性が高い。早ければ今年前半にも長期金利のターゲットの上方修正を余儀なくされ、長期債の買入れ量の調整による金利調整に幅を持たせた「長期金利バンド政策」に移行し、来年後半にも明確な形で利上げモードに転換することになるだろう。

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