円安で上昇する日本株に潜む「円高リスク」 FRBの「2017年予想」には「死角」が存在する
今回のイエレン議長の発言には、いくつかの興味深いポイントが見られた。トランプ次期政権の経済政策には「多大な不確実性がある」とし、政策運営を注視する考えを示している。
またバランスシートの縮小開始については、「適切といえるFF金利水準についての機械的なルールは存在しない」としている。またオバマ政権のレガシーともいえる「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」については、「金融規制改革法下での進展を後退させないことがきわめて重要」とし、トランプ氏へのけん制的な発言も聞かれたが、その一方で「多少変更される可能性はある」ともし、この点はトランプ氏の政策次第との考えをにじませた。
そのうえで「FOMCではトランプ氏の財政政策や選挙に対する市場の反応について討議した」ことを認め、経済政策がどのように変化するのか、さらには経済にどのような影響を及ぶかについて、かなりの不透明性が存在するとの認識を示している。
イエレン議長は自信を取り戻しつつある
一方、イエレン議長自身の任期については「4年の任期を全うする」と言明し、トランプ氏が選挙戦で「交代させる」とした発言に対して明確に否定した。そのうえで、「将来については何ら決定しておらず、再任の可能性もあるし、ないかもしれない」としている。以前にイエレン議長が発言したとされている「高圧経済」(多少のインフレなどが起きても金融緩和や財政刺激策をとること)については、「これを選好すると言ったことはない」と否定した。そのうえで、「トランプ次期米大統領に政策に関して助言することはない」とし、FRBの独立性を強く信じているとして、トランプ氏をけん制した。
これらの発言を聞く限り、イエレン議長は自信を取り戻しつつあるように感じられる。これまで利上げによる株安の恐怖にさらされていたが、トランプ氏の大統領選での勝利以降の株高で解放されたからであろう。
しかし、その一方でトランプ氏へのけん制も忘れてはいない。トランプ氏が正式に大統領に就任した以降にFRBあるいはイエレン議長に対してどのような対応を見せるかは不透明だが、FRBの独立性が担保されるかはわからない。
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