輸出入が同額でも「円安で企業収益増」の理由

円高は企業が損して消費者が助かる

ちなみに、昨年のドル相場前年比がピークを付けたのが6月と7月、消費者物価指数前年比(食料(酒類を除く)及びエネルギーと食料を除くベース)がピークを付けたのが昨年の11月と12月で、それ以降はいずれも下降を続けています。

上記のように、円高でも円安でも、日本企業が直接受ける為替差損と為替差益の合計は、おおむねゼロと考えて良いのですが、輸入企業の差損益は消費者物価に転嫁されるので、結果としては、円高だと企業が損して消費者は物価下落のメリットを享受することになります。反対に、円安だと企業が儲かって消費者は物価上昇に苦しむことになります。最近では円高でも輸出数量はそれほど減らず、円安でも輸出数量はそれほど増えないので、景気への影響も限定的です。

そう考えると、円高も悪いものではなく、円安もそれほどすばらしいものではありません。ただ、「円高でも円安でも輸出入数量はあまり変化しない」という昨今の状況を前提とした評価なので、注意が必要です。

トヨタの減益は当然

個別企業の決算(2016年度上期)の状況を見てみましょう。代表的な輸出企業であるトヨタ自動車は、営業利益が前年同期比4665億円の減少となりました。その主因は為替変動の影響(5650億円)で、これを営業面の努力などで一部補いましたが、及ばなかった、ということです。

これは、ある意味で当然のことです。輸出代金は原則としてドルで受け取るわけで、一部は為替予約が入っているでしょうが、それ以外の部分は為替変動による減益になるからです。

その分だけ、輸入企業が増益になっているかというと、そうではありません。関西電力の電気事業を見ると、売上高が1192億円減っており、経常利益も130億円減っています。為替差益や原油安等のメリットはあったものの、ほぼ平行して売上高も減少したため、利益はおおむね横ばいに留まった(厳密には微減となった)、というわけです。

東京ガスの都市ガス部門の経常利益分析も、同様です。原材料費等が1236億円下がっていますが、売上高が1632億円減っている事を主因として、経常利益はむしろ586億円の減少となっているのです。

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