輸出入が同額でも「円安で企業収益増」の理由

円高は企業が損して消費者が助かる

しかし、最近はなぜか円相場が輸出入数量にあまり影響しないのです。アベノミクスによる円安が輸出数量を増やさず、輸入数量を減らさず、エコノミストたちを困惑させました。アベノミクス前の1ドル80円が1ドル120円になっても、輸出数量はまったく増えなかったのです。

それと同様に、今年度前半の円高局面でも輸出数量は減っていません。財務省の貿易統計は、毎月の輸出入数量指数を発表していますので、その前年同月比を6カ月分平均すると、今年度上半期の輸出数量指数は前年同期比マイナス0.1%となっています。輸出数量は、おおむね横ばいだった(円高でも減っていなかった)のです。

ちなみに輸入は、同マイナス0.9%と、円高なのにむしろ減っています。輸入品から国産品に需要がシフトしたようにも見えるわけで、どちらかと言えば、円高が企業収益を改善させる方向の力が働いているようにも見える数字です。

円高以外の要因で企業収益が悪化したとも思われない

6月短観の業況感が悪かったのは、原油価格が高騰したことで企業収益が圧迫されたからでしょうか? 逆です。原油先物価格は年初がボトムでしたから、6月ごろに日本が輸入していた原油はドル建てで見ても円建てでみても非常に安かったわけです。日本は原油輸入国ですから、原油価格の値下がりは企業収益を押し上げる要因であって、押し下げる要因ではありません。

景気が悪かったから6月当時の業況判断が悪化したのだろう、と考えた人もいるでしょうが、景気は「良くも悪くもない」状態が続いています。景気のレベルを見る時に用いられる「景気動向指数のCI一致指数」を見ると、振れながらもおおむね横ばいで推移しています。

原因は消費者物価への転嫁

円高が企業収益にマイナスである本当の理由は、上記以外にあります。それは、輸出企業の為替差損がそのまま輸出企業の負担となる一方で、円高差益が消費者に還元されるからなのです。

輸入企業の仕入れ値低下は、そのまま輸入企業の利益として残るわけではなく、売り値の低下に結びつきます。輸入企業同士が競争しているので、コスト低下分を値下げして顧客獲得に走るからです。たとえば原油輸入価格が低下すると、原油を燃料に使っている製造業のコストが下がり、製造業の利益が増えますが、その一部は小売価格の値下げという形で消費者に還元されていきます。

円高がどの程度消費者に還元されているかを計算するのは難しいですが、還元されていることは疑いありません。「ドル相場前年比」「食料(酒類を除く)及びエネルギーと食料を除く消費者物価指数(総合)前年比」とを比べると、半年程度のタイムラグはあるものの、比較的似た動きをしていることがわかるからです。

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