うつのきっかけとなる1つの要因は、深夜まで仕事をしなければならないことなどによる、生活のリズムの乱れ。睡眠時間が短く不規則。食事時間も定まらない。このような状態を繰り返し、過重なストレスを受けることで、じきに心身の症状として現われるようになるのだ。
すると、体にもこんな“異変”が起こり始める。一般的に、疲れていたら、布団に入ればすぐに眠れるものだ。ところが、なかなか寝つけない。ようやく眠りについたと思ったら、夜中に目が覚めてしまう。再び寝ようとしても頭は冴え、疲れがとれないまま起床時間に。食欲はなく、お腹の調子も悪い。そして、職場に着くと急に頭痛が……。このような状態が、うつのサインだ。
「うつが疑われるときには、自分で判断せずに早めに精神科医に診てもらうことが何よりです。しかし、昇進に響くことなどを考えて、受診しない人もいるのが現状と言えます」(同)。
「非定型うつ」の3割は完治が難しい
古賀医師によれば、うつの患者は今や人口の20%程度と推計されており、増加傾向にある。中でも、近年目立って増えているのが、「非定型うつ」だ。
元来うつ病は、診療ガイドラインに沿って何種類かに分類されてきた。ひどい気分の落ち込みや罪悪感などが伴う「メランコリー型」、日照時間が少なくなる秋から冬にかけて発症しやすい「季節型」、産後4週間以内に発症する「産後型」などが代表的なものだ。しかし、近年はこれらのうちどれにも当てはまらない「非定型」のうつが増えているという。
「非定型うつの約3割は、薬の治療でも改善せず、治りきらない状態が続きます。うつ病の悲しみ、憂うつ、イライラ感などの気分障害は、通常数カ月で取り除かれるのですが、約3割の人はそれが続いてしまうのです」(同)
この非定型うつの特徴として、職場へ向かうと症状は悪化するものの、趣味での外出は平気といった人もいることが挙げられる。時と場合によって症状が変わることを、患者本人にはどうすることもできない。だが、他人から見れば「怠けている」「わがまま」のように見えてしまうため、周囲との関係性は一層難しくなり、さらにストレスを抱えてしまう。
「昨年12月、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が導入れましたが、うまく活用できない人もいるでしょう。労働環境の改善が難しいときには、自己防衛が何より大事です。ご自身で身を守ってください」(同)
古賀医師によれば、職場でストレスを感じやすくなる原因は、大きく分けて以下の4つにあるという。
②自分が思うように取り組める自由度の高い仕事が少ない
③上司が仕事に口をはさむが、サポートはない
④報酬が少ない
「こうしたストレスが積み重なって、解消できないほどに膨らむことで、結果として心身への悪影響を及ぼします。毎日少しずつ発散することが大切です」(同)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら