「炎上」が暴いたDeNA劣悪メディアの仕掛け なぜニセ情報が大量の読者を獲得したのか

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医師が運営するブログをみても、誤りが患者の不安を煽っているとの非難の声があがっていた。”胃がん”で検索すると「胃がんは、胃にできる悪性腫瘍で日本では肺がんに次いで死亡率の高いがんだといわれており、男女比は2対1と男性に多く、男女とも60代で一番多く発症しているといわれています」といった記事が、グーグル検索の第1位に表示されていたが、実際には肺がんに比べて遙かに”死亡率が低い”がんだ。

すでに多くの誤りが指摘されており、本記事でそのひとつひとつに言及することはしない。なぜ筆者がこの問題を取り上げたかといえば、DeNAが「ポスト・ソシャゲー」時代における収益の柱のひとつとしているメディア事業全体に大きな疑問を投げかけるものだからだ。さらにいえばプロ野球の球団を持つほどの大企業が、利益のためにどこまでやっていいのかというモラルを問う事例でもあるからだ。

なぜ誤った記事をバラ撒くようになったのか

ウェルクは、DeNAが新たな事業の柱として期待するメディア事業「DeNAパレット」の一部。ウェルクと同様の手法は他の9つの媒体でも使われている。このうちウェルクは2015年10月、DeNAパレットに追加される形で加わった「ココロとカラダの教科書」を標榜するヘルスケア情報サイトだ。

元はDeNAライフサイエンスが運営していた医療と健康に関する情報を発信する情報サイトで、品質に問題がある記事を掲載するサイトではなかった。ところが、DeNAパレットに組み込まれると、あっという間にアクセス数を延ばし、半年で月間アクセスユーザー数が600万人にまで達したというのだからすさまじい。

ウェルクには毎日約100本の記事が掲載され、それぞれの原稿は2000文字以上、1000円の報酬が執筆者には与えられていた。多くはクラウド人材サービスで調達した執筆者で、医療機関での就業経験や資格などは必要なく、執筆したヘルスケア情報の事実関係に関する質問や修正が執筆者に依頼されることもなかったという。

それだけ多くの読者に、自身や家族、友人知人の健康に関する心配事について、誤った知識をバラ撒いていたのであれば、それが他サイトからの転載に近い「パクリ記事」であれ、オリジナルで書き起こしたものであれ、大きな問題だ。

なぜ、このような問題サイトが生まれたのだろうか。それを考えるには、まず「なぜウェルクのアクセス数は急伸したのか」を考える必要がある。

ウェルクという情報サイトのブランドを聞いたのは、今回が初めてという人も少なくないだろう。それもそのはずで、ウェルクは利用者数こそ多いが、情報発信ポータルとしては決して人気サイトではない。

ウェルクの本質は、検索エンジン(具体的にはグーグル)のネット検索アルゴリズムを徹底的に研究し、そのクセを"悪用"している点にある。多くの人が興味を持つ検索キーワードに対して、真っ先に自社の記事が掲出されるように仕込み、多くの読者にクリックさせる仕組みだ。

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