DeNAパレットのサイト紹介にも書かれているとおり、DeNAはスマートフォンの普及によって、日常に溶け込んだ「インターネット情報アクセス」という行動に対して、普遍的にアクセスされるだろうテーマを選び、10のメディアを運営している。
そのいずれもが、ウェルクと同じ手法で立ち上げられている。アクセスを集め、まったく品質管理されていない低廉な記事を大量に投入することで広告価値を高めてマネタイズする仕掛けだ。ひたすらに検索エンジンを"騙し"、その結果として莫大なアクセス数を得てマネタイズ効率を上げていこうという思想が前面に出ている。
前述したように、DeNAは守安社長を中心とした管理委員会で品質改善に取り組むという。この管理委員会による改革に期待したいところだが、問題の根は深く、それほど簡単ではないだろう。
たとえばグルメ情報などの発注要領では、執筆者へのメール内容から”グルメサイトの検索結果などからコピーしたお店の紹介リストをコピペする方法”を推奨。その報酬額としては1件約100円しか設定されていなかった。それらの情報をとりまとめる編集者への報酬と合わせても175円。他サイトからの文章やアイデアの盗用を推奨することなく、これだけ低廉な価格での記事は製作できないからだ。
DeNAパレットの中でも事業的に成功している媒体(MERY、Find Travel)でも、記事内容や使用する写真盗用、記事の品質に対する疑問の声が挙がっている。ウェルク問題が大きくなったことで、今後はすべてのDeNAパレット媒体に疑いの目が向けられるだろう。
新たな価値創造をする意識が見えない
さて、「そうは言っても、エンターテインメントなのだから、面白くて役立つ情報であればいいではないか」「人の生き死ににかかわる問題サイトだけを閉じれば炎上は止まる。それほど大きな問題ではない」という意見もあるだろう。
筆者もウェルク問題が長期間、炎上し続けるとは考えていない。すでにいったん全記事を非公開にもしている。今後、問題記事を除去し、品質を高める努力をすれば、あっという間に鎮火して話題に上らなくなると考えている。
しかし、前述のとおり、DeNAパレットの手法には根本的な危うさが感じられる。
DeNAパレットは2014年10月にスタートして2年あまりになるが、同社によると月間アクセスユーザー数はプラットフォーム全体で5000万を超えるという。彼らはこの数字と主力2媒体(MERY、Find Travel)の実績を元にメディア事業の健全さを訴求してきた。
ところが、すべての媒体に共通することだが、新たな価値創造をしようという意識が見えない。これが単なる印象やイメージだけではないと筆者が考える理由は、その運営体制にある。クラウドソーシング企業を使い、極めて低い金額で、専門知識を持たない執筆者に、内容も品質も丸投げにしているからだ。
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