――親の意識の変化は何かありますでしょうか。
今の親は確かに面倒見のよい学校を求めるようになっています。地域レベルでの取り組みとしては親との対話もこまめにおこなっています。地区懇談会というのを設けて、対話の機会を提供します。親が委縮しないように学校側からの参加者は私一人です。
ですが、面倒見がよいことと、手取り足取り勉強を教えることは違います。本校は最初のうちは宿題も出すし、学校側からの指導もこまめにやりますが、徐々に減らしていきます。基本に据えている教育方針は「自調自考」。最終的には自分で考えて大学受験を突破して社会に出て行ってほしいのです。
「自調自考」の校是のとおりチャイムは鳴らない
先程の、帰国生クラスのシリア問題を取り上げる授業では板書もありませんし、知識の充足を図るテストもしません。ディスカッションや発言、レポートなどの授業への参画の様子が評価の対象です。それにほかの学校と違うのは始業と終業のチャイムが鳴らないこと。生徒たちには自律的に行動してほしいと思っています。
――やはり渋幕らしさは国際的な授業にあるようですね。どうしてこのような国際的な取り組みができているのでしょうか。
「国際的」や「グローバル」といった言葉に皆さん注目されますよね。ですが、それは裏を返せば、「国際人」ということを日本人は知らないからなのだと思 います。「国際人」なんて言っているのは日本人だけ。欧米にはそのような言葉はありません。あるのはイギリス人とかフランス人とか国家に属する人間。「国際人」などという漠然とした概念はないので す。
でも日本では当たり前のように、皆、「国際人」という言葉を知っているし、「国際人」になろうと努力している。知っていますか? 欧米の外交官は日本に赴任が決まると喜ぶんです。なんでかわかりますか?