宇宙飛行士界に見る、30代から「伸びる人」

世界一厳しい選抜試験で、選ばれる人とは?

1回や2回の面接なら誤魔化せても、回を重ねるうちに、見えてくることがあるという。「いくらいいことを言っても、その言葉が自分の経験で裏付けられていることや、つねに自分が考えていることでなければ、聞いている側の心に訴えない。頭に入らないんです。きっと感情が乗ってこないからでしょうね」(山口)。

あまりに美しい理想ばかり並べる人には、あえて“外す”ような質問をするという。たとえば「失敗したことはありますか?」と。

「大事なのは失敗から何を学んだか。どうやって失敗をリカバーしたか。同じ失敗をしないために前向きに考えているか。そういう質問を重ねることで、自分を客観視できているかどうかがわかります」(山口)。

宇宙飛行士の山崎直子さんは「宇宙飛行士の選抜試験で、付け焼き刃で準備できることはほとんどなかった。それまでの人生そのものが選抜試験の対象と感じた」と証言する。

「面接では、子ども時代までさかのぼっていろいろ聞かれました。学校も部活も習い事も、途中でやめたものもたくさんあるが、失敗もなにかしら必ず学びになる。何を学び考えてきたか。試験の過程で私自身も見つめ直すことになった」(山崎さん)。

急ごしらえで、見栄えのいい自分を作り上げるのではなく、自らの過去の経験を振り返り、もともと心の奥にあった考えを言語化する。相手の「心に響く」言葉はそうして生まれるのだろう。

「ダメだし」で揺さぶりをかける

一方、面接だけではどうしても見極めきれない資質もあるという。たとえば宇宙飛行士にもっとも求められる資質である「チームワーク」や「リーダーシップ・フォロワシップ」。特に”想定外の事態”が起こったときの対応を審査員が実際に見て、その能力を確かめる。

そこで最終試験に登場するのが、約1週間をかけ、閉鎖施設に缶詰状態で行う試験だ。JAXA筑波宇宙センターには、宇宙ステーションを模擬した閉鎖施設がある。窓がなく、テレビもラジオもなく外界と隔絶された施設に、10人のファイナリストが入る。5台のモニターカメラがあり、別室の審査員から24時間、その一挙手一投足が見つめられる中で、課題を次々こなしていく。日本特有であり、日本の選抜試験が世界一厳しいと言われる理由がこの閉鎖試験だ。

課題のひとつにファイナリスト10人が2チームに分かれて取り組むロボット製作があった。テーマは「癒しロボット」。2チームそれぞれに工夫を凝らしロボットを作り上げ「できた」と安堵したとき、審査員の無情な一言が告げられる。「面白くない。改良してください」と。

「改良を加えるにも締め切り時間が数時間後に迫っている。『今更、改良と言われてもどうしたらよいのかわからない』といった心理状態が伝わってきました」(山口)。

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